リボーンが端的に告げた言葉を、信じられるものは誰ひとりとしていなかった。 けれど、実際綱吉はそこにはおらず、リボーンの手には綱吉の携帯が光っていた。 「そ、んな・・・」 震える声を絞り出したのは、綱吉を敬愛してやまない隼人だった。 今、リボーンはこう言った。 ツナが、ハルと逃げた、と。 逃げた・・・本当に、逃げたのだろうか。 確かに中学の時は俺はマフィアのボスにはならないと連呼していたけれど、高校に入学してからはその言葉を口にすることはなかった。 皆を守るためにマフィアのボスになると、そう決心した顔をしていた。 それが例え逃げたいと思って逃げたのだとしても、それならばどうしてハルと。 隼人の頭の中の疑問に答えたのは、続いて説明するリボーンの言葉だった。 「ハルはボンゴレ[世ダニエラの子孫だ」 「はっ!?」 リボーンの言葉に思わず硬直する。 ボンゴレという組織をいまいち分かりかねている武や了平は別としても、ボンゴレを、マフィアを撲滅しようとしていたことのある骸も眉を寄せていた。 「・・・僕らを集めたのは、その2人を捕まえるためですか?」 「ああ」 ごくりと、息をのむ音がする。 ゆるりと見渡したその顔ぶれの幾人かが、苦しげに顔を歪めていた。 「五体満足で捕まえられるなら、あとは何をしても構わない」 「なっ!」 リボーンの言葉に、隼人が目を見開く。 そんな隼人を一瞥すると、リボーンが小さくため息を吐いて、また口を開く。 「ただし、どうやって捕まえるかは個人の判断に委ねる・・・ツナは超直感があるから逃げられる可能性が高いだろうな」 「!」 その言葉に含まれた意味に、隼人はぱっと顔を上げた。 武もいまいち全てを理解しきれないにしろ、安心したように顔を緩めた。 「ツナは修行してやってんだ、多少攻撃しようと構わない。ただし、三浦ハルは血を持てども一般人だ。攻撃はくわえるな」 「それは・・・」 「あの馬鹿がここにいないのは純然たる事実だ。理由はどうあれ灸をすえてやるのは当然だろう」 手のひらで綱吉の携帯をいじりながら、リボーンがはっと吐き捨てる。 どこか楽しげなリボーンに少しだけ戸惑いながら、隼人がこわごわと頷いた。 それを確認して、じろりと面々を見る。 「それじゃあ、行ってこい・・・タイムリミットはなるべく早めに、それと手段、方法は問わない」 「・・・わかったのな」 リボーンの言葉に若干躊躇いながらも、武が頷く。 それから各々走り出した姿を見て、リボーンは深くため息を吐いた。 |