走り出した刹那、後ろから急き立てるように響く爆音に、綱吉は反射的に足を止めて振り返った。
その突然の停止についてこれず、ハルがぽすんと背中に当たる。

「・・・隼人」

ボンゴレの人たちが近くまで来ていたことは分かっていた。
だけど、隼人が近くにいるのを感じて、どうしても話したかった。
きっと、裏切りのように見えただろうから。

じっと黒くあがる煙を見つめていた綱吉に、ハルはぐっと堪えてから笑みを作った。

「行ってきてください、ツナさん」
「え」

ハルの言葉に、思わず目を見開いた。

「獄寺さんが心配なんですよね・・・?だから、」
「行かないよ」


精一杯笑ってるつもりなんだろうか、ハルは。
ああ、きっと笑ってるつもりなんだろうな。
目は今にも泣きだしそうなほどに潤んでいて、眉が寄せられていて。
口こそ笑みの形をしているけれど、ふるふると震えて今にも崩れ落ちそうだった。

そんなハルを置いて行けるわけがない。


「もし俺が行ったら、ハルは帰ってこないだろ?」

ニブツナニブツナと繰り返されてきたけれど、それくらいわかる。
ハルがダニエラの何を知っているのかは分からない。
だけど、あんな似合わない耐え方をして、一人堪えていたハルが俺の手を取って逃げ出した以上。
きっとここで離れてしまったら、ハルはもう帰ってこないってことくらい、わかる。

「ツナ、さん・・・」
「だから、俺も一緒に行くよ。ハルと」


それにきっと隼人は大丈夫だ。

相手はボンゴレだし、爆音はまだ続いていて、隼人が攻撃を続けていることもわかる。
握ったままの手を再確認するように強く握った。


「だって、ハルは俺の大事な仲間なんだから」


いつだって笑顔で傍にいてくれた。
泣いている時も、俺を見つけると頑張って笑顔になってくれて、でもそれを指摘すると縋って泣いてくれた。
頼ってくれることが嬉しくて、でも俺が弱くなった時は誰よりも先に気づいてくれて。

失うなんてこと出来ないくらい、大切な仲間だから。


「・・・・・・は、い」
「行こう、ハル」


綱吉に手を引かれるまま、ハルは重たい足を動かした。
足はさっきよりももっともっと重たい気がした。

「・・・ツナ、さん」

こっそりと、走る音にまぎれるように小さな声でつぶやいた。

仲間。
大事な仲間なのだと思ってくれることが嬉しい、凄く、嬉しい。


でも、だけど。





滲んだ世界、あなたの後ろ姿



( どうしてだろう、凄く凄く哀しくて、涙が溢れてしまいそう )