騒然と響く声。

一人の少年と少女が逃げ出した。
それだけだというのにそれに似合わないほどに騒がしいこの状況に、リボーンは知らず知らずのうちに笑みを浮かべてていた。

片方は初代に繋がる少年、片方は[世へと繋がる少女。
その血を持って生まれたがために、未来を決められた二人。
その二人が未来という必然にあらがうように手を取り合って逃げだした。
笑みを浮かべない理由がない。


「ご報告いたします!守護者の3名、嵐、雨、晴が離反しました!」
その言葉に、まだ三人だけか、とさらに口を緩めた。
守護者の離反など目に見えて分かっていたが、それをあえて言うつもりはなかった。
守護者は、ボンゴレのためのものではない。
あれは綱吉が綱吉であるからこそ出来た人脈とも言える。
リボーンか、綱吉か。
そう選択を迫られたなら綱吉を選ぶのは分かっていた。

それでも、言わなかった。


「そうか」

どうせ、ハルを連れながらならばそんなに対して距離を逃げることはできないだろう。
並盛のありとあらゆる道路を閉鎖し、狭めていけばとらえることは可能かもしれない。

けれど。

頭の中にハルの姿がよぎる。
ハルがダニエラの何かをしり、それに苦しんでいた。
そうして綱吉はソレに気づき、ハルと共に逃げた。

「下手に事を大きくすると他のマフィアに感づかれる」
そう呟けば、ボンゴレという体裁を、外面を大切にするやつらの反応など目に見える。
最低限でしか動かない、しかも守護者の離反の対応に明け暮れながらなど、そんな程度で捕まえられるような教え子を持った記憶などない。


何を、知っているのか。
ハルは一般人の少女でありながら、その性格か状況か、やけに人脈は広かった。
流石にヴァリアーのベルと知り合いだった時には、綱吉をはじめ守護者が仰天していたけれど。

誰が、何を彼女に教えても仕方のない状況だと言える。
制限したくないと、そういう綱吉の判断に任せ、彼女に接触する人間を制限した覚えもないから尚更。

ああ、いや。
情報源などどうでもいい。
重要なのはハルが何を知っているかでもない。


二人が、何を見つけるか。


その答えはきっと、もう自分には分かっていた。
けれど、それを教えてやっては意味がない。

「俺は家庭教師、だからな」

答えを先に教えてやる家庭教師など、いるものか。


そう呟くと座っていた椅子に身を任せるようにもたれ、次の離反する守護者の名前を待っていた。





手習歌の最後の音は



( きっとがむしゃらに見つけ出す、小さな最後のピース )