クロームのあの丸い心を映し出すような、そんな鏡のような瞳から逃げ出すように道路に飛び出した。 短い距離をちょっと走っただけなのに、息が辛い。 ハルはどっちに行った? 体を巡るその血に問いかければ、すぐに答えは分かって。 それに導かれるままに走り出した。 クロームの、骸の、さっきの言葉が頭を回る。 例えば骸が逃げたいと言ったならば、俺は骸と一緒に逃げてやれただろうか。 クロームが逃げたいと言ったならば、俺はクロームと一緒に逃げてやれただろうか。 骸が逃げ出したら、今度こそ復讐者に捕らえられたら助け出すことはできないかもしれない。 クロームが逃げて、もし幻術が切れたら、俺はクロームを助けるすべを持たない。 仮定を否定するように頭の中に考えが巡る。 骸じゃなくても、クロームじゃなくても、他の仲間が逃げたいと行ったら、俺は一緒に逃げようと手を差し伸べるんだろうか。 全てを、捨てて。 ハル。 昨日まで左手でつないでいたぬくもりを持つ彼女を頭で浮かべる。 行動が突飛で、いつもこっちの予測の斜め上を行って、騒がしくて、でも明るくて、元気いっぱいで。 何度その笑顔と行動力と芯の強さに支えられたか分からない。 十年後でもずっと支え続けてきてくれた、大切な仲間。 そうだ、ハルは、大切な仲間だ。 そう結論に至ると、またクロームのあの瞳を思い出す。 同じ“大切な仲間”のクローム、骸。 例えば2人が手を震わせ耐えていたら、俺は二人と逃げ出すことを選んだだろうか。 「くそっ!」 頭の中をぐるぐると回る考えに答えが出てこない。 導き出してしまえば単純なような気がするのに、こんなところは超直感が役に立たない。 ハル。 頭の中で思い浮かべる。 始めて俺を好きだって言ってくれた女の子で。 俺のためならと崖をロープ一本で降りてこれるような子で。 そのハルは今、俺の手の先にいなくって。 ああ、いらいらする。 どうしてこんな気持ちがわき上がるんだろ。 どこに行った、どうして手を離した。 ハルが一人で逃げていても、きっとすぐボンゴレに見つかってハルは帰ってくるだろう。 だからハルが帰ってこないなんてことはありえない。 追いかけなくてもハルは帰ってくるのに。 どうして。 どうして俺は追いかけてるんだろう。 答えが見つからないまま、俺は超直感の導くままに走り続けた。 |