「はっ、は・・・!」 息が詰まる。 機械的に動かす足はどんどんと減速していくばかりで、思い通りにならない足に舌うちをした。 気持ちは焦るばかり。 衝動的に飛び出してきたのはいいものの、行くあてもなく走り続けることしかできなかった。 鉛のように重い足を無理矢理に持ち上げて動かす。 どうして逃げてきたのかわからなかった。 ・・・いや、違う。 どうして逃げたのかは分かっている。 けれど、それを認めてしまうのが怖くて怖くて仕方がなかった。 「つな、さん・・・」 は、と息を漏らしながら、彼の名前を呼ぶ。 ツナさん。 可愛いものを除いて、初めて自分が好きになった人。 ピンチのときに助けてくれて、まるで王子様のように優しくて格好良くて。 でも普通の男の子で。 ツナさんが進むのならば、どんな茨の道だろうと、ついていく覚悟があった。 そんな大げさななんて言われようとも、本当にそれくらい強い覚悟があったのだ。 「どう、して・・・!」 つい骸にも向けてしまった疑問。 その事実を聞いて震えてしまったことを優しいあの人が放っておけなかったのはわかる。 ダニエラの子孫であるという事実に、思わず身体を震わせた。 それを見て、あの人がなんとかしてくれようと、そう思ったのはわかる。 時々、その優しさが痛いから。 「ハルのこと、」 でも、どうしてもわからない。 大切に思ってくれてるのは知っている。 失いたくないと思ってくれているのは知っている。 けれど、でも。 どうして一緒に逃げようなんて手を差し伸べてくれるんですか。 「ハルのこと、好きなんかじゃないくせにっ!」 叫んでしまったその言葉に愕然と崩れそうになってしまう足を叱咤して、また走りだす。 酷い酷い酷い。 導かれるままついて来てしまった自分も自分だけれど、手を差し伸べてくれた綱吉も綱吉だ。 思わずあふれそうになった涙を、ぐっと堪える。 泣けない、泣かない、泣いてやるものか! そう思いながら走っていたせいだろうか、突然目の前に現れた何かにぶつかって、ハルはよろけて立ち止まった。 「は・・・ひ・・・?」 くらりと、一気に疲労が押し上げてくらりと頭が揺れる。 そんな頭に手を添えながら、目の前に現れた何かに目を向けて、目を見開いた。 「あ・・・」 ゆっくりと、その人物を頭が理解して、ハルはさぁっと顔を青ざめた。 |