「は、はひ・・・よかったんでしょうか・・・勝手に抜け出して」 「もうリボーンとかも慣れてるって。別に仕事ほっぽりだしてるわけじゃないし、敷地内から出てるわけじゃないし、監視カメラの映る場所にいるし」 ね?と首を傾げる綱吉にハルは反論の言葉をなくしてしまって、こくりと頷いた。 白いスーツに白いドレス。 それは一見すればわかる、結婚をする二人の服装で。 緑の広がる芝生の上に二人で座り込んで、真っ青な空を見上げる。 「皆と一緒にいるのも楽しいけど、あまりにも二人の時間が少ない気がするんだよね。っていうか、こんなことでもしないと二人でいられないし」 「はひ・・・でも、折角皆さんが準備してくださってるのに」 「ちゃんとそれをするだけの時間がある間には帰るって」 ころりと膝の上に転がってくる綱吉を反射的に受け入れ、顔を綱吉の顔の方へと向けて、もうっ、と呟く。 けれど本気で怒ってないのがバレバレなのか、綱吉は小さく笑うだけだ。 まぁ、確かに最近は準備やら何やらで全然二人っきりになれなかったですけど。 ふいに、こんな脱走劇をくりだすことがある。 仕事漬けの毎日で漸く仕事が終わった時だとか、中々二人っきりになれない時だとか。 いや、脱走劇なんてものじゃない。 ただ二人になれる場所へ、勿論敷地内の、いつだって見つかってしまう監視カメラに堂々と映る場所なんかに。 「ハル、好きだよ」 「・・・ツナさん・・・」 きまって、二人っきりになると綱吉はそう言う。 古参の幹部たちはボンゴレの血が強くなることを喜んだため酷く歓迎してくれたし、ハル自身も努力を惜しまない人間だったため、ボンゴレの部下たちに受け入れられた。 そうして誰からも歓ばれた二人の関係が、周りのためではなく、ただ自分の感情なのだとそう訴えるかのように。 「はい、ハルも・・・ツナさんが大好きです」 昔、まだ高校生でまだ背負いきっていなかった時。 たった二人で逃げ出した・・・なんていっても、隣町程度だったのだけれど。 きっとあの時の二人の世界の全てだった。 何もかも捨てて、たった二人で逃げ出した。 あんなこと、あの時しかできなかっただろう。 今はもう、背負うものはあまりにも大きくて重いものだから。 だから脱走劇は小さな範囲で、迷惑をかけないように、そうして皆にバレていること前提で。 多分何度めか分からない小さな脱走劇に慣れっこになってしまった彼らは今頃溜息を吐いて苦笑をしているだろうと思う。 だけど、もうちょっとだけ。 「大好きです!ツナさん」 まるであの日みたいに突然に、今度はハルから綱吉に口づけを落とした。 きっかり、10秒間触れあうだけの、甘い口付け。 |