騒然とした漆黒に染め上がる会議の席で、リボーンはただ真っすぐに面々を見つめていた。 戸惑いに顔を染めるもの、眉間に皺をよせて拒絶を示すもの、不可解な表情をしているもの。 全員が浮かべる表情の意味は不可で、リボーンはため息を吐いた。 「どういうことだ、リボーン!」 バンと机を叩いて立ち上がったのは、古株の一人だった。 それに机の上のグラスが揺れたが、誰もそれを気にしたものはいなかった。 「どうもこうも、そのままの意味だが?」 クツリとリボーンは喉で笑う。 「だからっ!」 そう叫ぶ一人に続くように眉を潜める面々の中で、リボーンは仕方ないといわんばかりに息を吐いた。 「さっきも言ったが、三浦ハルを次期ボンゴレ十代目沢田綱吉の婚約者にする」 再びどよめく面々に、リボーンは深く深くため息を吐く。 まったく、人の話聞いてんのか、こいつらは。 沢田綱吉に自分の娘をと考えていただろう面々や、他の有数のマフィアの娘をと考えていた者たちの顔が苦渋に満ちる。 それ以外のもの達は三浦ハルの立場に戸惑っているようだった。 「しかし、リボーン。マフィアでもない一般の女をボンゴレ十代目の婚約者にするというのは・・・」 ボンゴレ幹部として入りたての青年が戸惑ったように告げる言葉に、他の者たちがうんうんと頷いた。 その通りだ、と称賛する声すら聞こえる。 まったく、何も分かってねぇな。 「・・・俺が、何の理由もなく言うと思うか?」 一気に空気を凍らせるような睨みに、うっとたじろいだ。 「で、ですが、沢田綱吉が好きなのは笹川京子のはずでしょう?」 一体何所まで綱吉のプライベートは漏れているのだろう。 綱吉が聞いたら頭を抱えたくなるような言葉に、リボーンはふと口元だけで笑う。 確かに、綱吉が好きなのは京子だ。 「ああ、そうだな」 「笹川京子を推されても困りますが、なぜ沢田綱吉の意思を無視してまでも、三浦ハルを推そうというのですか?」 要は、一般人の何でもない少女が沢田綱吉・・・ボンゴレ十代目の嫁になるという事実がいやなのだろう。 それにかわるがわるのように理由をつける。 まったく、そういうことばっかりに頭が働くやつらだな。 「確かに、ツナの意思を無視していることになるのかもしれねぇ」 ツナが好きなのは京子だ。 言っちゃ悪いが、ツナはハルに対して恋心、というものは持っていない。 自分を恋愛感情で好きでいてくれる女の子、という気持ちはあるし、大切だから護るという気持ちもあるようだが、恋慕までは向かないようだった。 総じて、あいつはニブいからな。 恋慕が芽生えるタイミングを失ってしまった、というのもある。 「リボーン、答えてください」 一人が立ち上がる。 それに促されるように他の者たちもリボーンに目を向けた。 「三浦ハルにこだわる理由は、なんですか?」 あの、何の力もない一般人の少女にこだわる理由は。 それを意味する視線に、リボーンは苦笑した。 |