「ツナさんっ!ハルは、平和な並盛に帰りたいですっ!」

泣きながら俺に抱きついたハルは、皆の叫びを代表していたんだと思う。
正直、俺もそうやって泣きたかった。でも俺のせいで巻き込んだんだから、泣くなんてできない。
全然関係のないハルや京子ちゃんを巻き込んで、あんな怖い思いなんてさせて。

俺のせいで。




「ツナ君?」
「・・・わっ!」
ボーっとしてたみたいで、目の前に京子ちゃんがいても気づかなかった。

「どうしたんですか?ツナさん。ボーっとして」
ハルも俺の顔を覗き込んでくる。

「いや、別に何でもないよ」
「本当ですか?」
「うん」



どうやら二人は夕飯の準備をしようとしてたらしくて、その手の上には食材が乗っていた。
ハルも平和な並盛に帰りたいって泣いた後にすぐに切り替えてて、本当女の子って強いと思う。
でも、きっと本当は強がってるだけじゃないのかと思う。だって笹川先輩と逢えたときに、京子ちゃんは泣きそうな顔で抱きついてたし。

ハルも・・・一人で泣いてた。


「あ、お、おれなんか手伝おうか?」
「え?ありがとう!でもいいよ。ツナ君たちは修行で大変なんだから。任せて!ね?」
拳を握ってガッツポーズを作って、京子ちゃんが笑った。
「そうですよ。ツナさんはたくさん頑張ってるんですから、これくらいさせてください!」
じゃがいもの入ったボールをぎゅっと抱きしめて、ハルが笑う。
本当に、強いな・・・二人とも。

「で、でも、いつもおいしいご飯作ってくれてるし。なんか手伝うよ」
何も言えない申し訳なさと、いつも作ってくれて片付けもしてくれてランボ達の相手もしてくれてることが申し訳なくて、食い下がるように提案した。
二人とも、不安なのに頑張ってくれてて・・・それなのに元気な顔で笑ってくれてるし。


「じゃあ、私これもって台所行ってくるから、ハルちゃんはツナ君と一緒に残りの材料持ってきてもらってもいいかな?」
ひょいっとハルの手にあった材料を持って言う京子ちゃんに、ハルがはひ!と声を上げた。


「そんな、京子ちゃん・・・!ハルが持っていきますよ!」
「私先にジャガイモ切って水に浸しておくよ。ね?」
「はひ・・・わかりました。それじゃあ、ツナさん、行きましょうか」
どうやら、俺はハルの手伝いをすることになったらしい。


「え、えと・・・」
「じゃ、行きましょう!ツナさん」
ぎゅっと腕を抱きしめて、ハルが俺を引っ張っていく。

「わ、わ、ちょっと待てよ、ハル!」
「残りはお肉とサラダの材料ですよ!今日はカレーなんです!」



ハルはいっつも強引だ。
人の話は聞かないし、こっちの了承なんて気にしてないし。
それでも憎めないのは、嬉しそうに笑うせいだと思う。

そんないつもどおりのハルに、なんだか安心したなんてことは絶対に言ってやらない。





いつもどおり



( それは不安を抱える僕を勇気づけてくれた )