少年は、その想いを認めることは出来なかった。 仄かに芽生えたその想いがいくら存在を主張しようとも、頑なとして目を逸らした。 けれど、雑草だといわんばかりに引き抜くことはできなかった。 なんと言っても、その彼女は5年間たった一人の男を思い続けているし(その一途さが見える度に何かが軋むのは見ないふりをする)、それは自分で仕向けたことだ。 しかも、相手は自分を子どもだとしか思っていない。 ・・・報われなさすぎる。 第一、彼はこれが恋だなんて認める気が無かった。 「・・・何やってるんだ、ハル」 目の前で少年用(しかもサイズから考慮するに・・・いや、考慮する以前に明らかにリボーン用の)洋服をカーペットの上に広げているハルを見て、リボーンはため息を吐いた。 声をかけられて、座っているせいで珍しいことに見上げてくるハルが嬉しそうににこりと笑った。 (その時、心臓のあたりからやけに大きな音が主張したのを、彼はお得意のポーカーフェイスで無視をした) 「リボーンちゃんの服を広げてます」 えへ、と小さく笑って、また一枚と服を開いた。 「・・・この数はなんだ」 「だって、楽しかったんですもん」 そう呟くハルは、正直可愛い。可愛い、が。 グラリと少しだけ感じた眩暈に、リボーンは手を額にあてた。 床一面に広がる洋服は、ざっと数えただけで50は越している。 きっとこれを買い与えたのは、ハルに甘い綱吉だろうということは、今までの経験で確信できる。 別にこれくらいでボンゴレの財政は微かにも揺らがないが・・・。 「さ、着てみてください!」 きらきらと、ハルの目が輝いている。 「・・・これを、か?」 見れば、至って普通の少年が着る服ばかりで。 ハルがいなければ、きっと永遠に着ることがなかったと断言できるような服だ。 いかにも、光の中で笑う子どもが身にまとう、そんな服。 闇の中で生きる自分には、決して相応しく、 「何か、変ですか?」 当然のように、その存在ではなく服のセンスについて首をかしげるハルに、思わず目を細めた。 「・・・いや、そうじゃなくて・・・俺が着る服の種類じゃないぞ・・・」 「そんなことないですよ!リボーンちゃんは何でも似合いますもん!」 誰もが、そう生まれた瞬間にいたシャマルですらしない子ども扱いを、ハルは当然のようにする。 決してそれは見下しではなくて、区別でもない。 目の前にいる存在である自分の姿に、当然の愛情を与える。 全てを知っておきながら、それを見ないのではなく、見た上ですら。 誰もが知識があり頭脳があり力があるからと、決して与えられることのなかった、子どもへの愛情。 「リボーンちゃん?」 それを、与えてくれるから。 「・・・・・・何でもねぇぞ」 ただ、それだけ。 |