「ぶふっ――!」 突然ボンゴレお抱えのヒットマン兼家庭教師が電話をしながら年相応に噴出したら、そりゃあ気になると思う。 綱吉は内心うんうんと頷いた。 「どうしたの、リボーン」 綱吉の不思議そうな視線と、その後ろに続く似たような視線に、リボーンはにやりと笑った。 「いや?別に何でもねぇよ」 そう笑う時に限って何かあるんだよなー・・・と今までの経験から照らし合わせてみるけれど、言葉にはしない。 下手に言い返せば、彼のスーツの下にある銃の銃口がこちらを向くのは必須だからである。 ちらりと、リボーンは綱吉の机の上にある書類を見る。 「今日は確かハルの結婚式だったな」 ドッガラガッシャン。 まさにそう表すのがピッタリな動作だ。 ペンを投げ出し後ろに仰け反り、思いっきり倒れた。 ギクシャクと椅子を立たせ、綱吉は視線を彷徨わせた。 「そ、そそそそそそそそうだね!――あ、そういえば骸遅いなぁ!」 明らかに動揺する綱吉にリボーンはエスプレッソを飲んだ。 「そんなに好きなら連れてくれば良かっただろうが」 「そ――そんなことできるわけないだろ!何があるかわからないのに!」 「・・・まったく、好きな女なら死ぬ気で護って見せろ」 リボーンの言葉に綱吉はぐっと息を飲み込んだ。 「ハルには、普通の生活をしてほしいんだ」 一つ、リボーンは溜息を吐いて、カラになったカップを置いた。 「なら、未練たらったらな顔して言ってんじゃねぇよ」 「――う」 図星ですと言わんばかりに歪んだ顔に、リボーンは鼻で笑った。 全く、不器用なやつだ。 そう思いながらリボーンは胸元に入れてあった銃を今一度確認する。 (仕事前に自分は一流だと銃の確認をおこたる奴は、三流以下だと思うのは彼の長年のポリシーである) 「んな顔してるくれぇなら花嫁奪ってきやがれ」 「な!!そんなことできるわけないだろ!」 全く持って根性のない教え子だと思う。 まさにイタリアに渡る前にハルが叫んだ「絶対に――置いていったこと後悔させてやるんですから!」通りになっているというわけだ。 「イタリアで式あげてるってことは、お前のことは完璧に決別しますよってことだな」 「う゛!」 一瞬にして顔色が変わった。 くつくつと喉の奥で笑いながら椅子から身体を起こした。 「じゃ、仕事に行ってくる。さぼんじゃねぇぞ、ダメツナ」 「え、あ、うん。行ってらっしゃい」 気をつけてね、と笑う綱吉に、リボーンは扉に手をかけた。 「そういえばダメツナ」 「ん?」 首を傾げる綱吉に、リボーンは思いっきり楽しそうに笑った。 「その花嫁が今、式場から逃げ出したらしいぜ?」 パタンと扉を閉じて数秒後、室内から聞こえた叫び声にリボーンは声をあげて笑った。 |