「おや、お久しぶりです。――もの凄い格好ですね、ハル」 クフフフ、と聞いたことのある笑い声がして、ハルは息を呑んだ。 その声は丁度勘のまま曲がり角を曲がったときで、そこには壁へともたれかかる――。 「む、骸さん!?」 ボンゴレの霧の守護者であり、昔綱吉の敵として争った骸で、その現在の姿はあまりにも穏やかではない。 「は、ひ!?ど、どどどどうしたんですか!?その格好!」 「それはこちらの台詞ですが・・・。そういえば君は今日結婚式でしたね」 「何で知――じゃなくて!なんでそんなに大怪我してるんですかぁ!?」 ひぃっと驚くハルの目の前にいる骸は傷だらけで、一部シャツが赤く染まっていた。 「・・・ああ、これですか。少々失敗しまして」 クフ、っとにこやかに笑うがそれどころではない。 未だに血が流れているところもあって、ハルはざっと顔色を変えた。 特に顔の右半分が酷く、その端正な顔は赤い血に埋もれており出血量も酷い。 「は、はは、早く病院に行かないとっ!」 「それが実は今追われてるんですよね・・・」 慌てるハルに骸は至極冷静に手を顎に添えた。骸は本当にそれどころでは無い怪我だ。 病院行ったら捕まって殺されかねませんしねーとポヤポヤと考える骸にハルは絶句した。 (マフィアって・・・マフィアって・・・こうなんですか!?ツナさん!!) もしここに綱吉がいたなら、こいつは例外だ!と叫んだだろう。 ともかく、考え込む骸が先ほど行っていた言葉のとおり、向こうから足音と声が聞こえる。 本場のイタリア後を中々上手く聞き取ることは出来なかったが、その荒々しさから考えるに敵らしい。 ふと骸はハルの方を見た。 「君は危ないから僕と離れていてください。花嫁は目立つかもしれませんが、とりあえず表通りで一般人に危害は加えないでしょう」 「骸さんは!?」 にこやかに笑う骸に脊髄反射のように問うと、骸はまた笑顔を見せた。 「僕はとりあえず逃げます。この辺の地理は良く知ってるのでっ・・・!」 ぐらり、と骸の体が揺れた。 「骸さん!!」 急いで支えようとする手はそっと避けられた。 痛いのか思考が働かないのか、分からなかったけれど片手で頭を抑え眉間に皺を寄せて、骸はまた笑った。 「少し出血が多かったようですね・・・」 余りの出血の多さに少しだけ逸らしていた骸の顔を改めて見ると、すぐに気付いた。 額から目のあたりまでにかけては顔は真っ青なのに、頬は僅かに上気していた。 この10月も過ぎた寒い時期に、血が抜けているはずなのに。 骸の顔を見つめながら違和感に気付いて首を傾げていると、さらに足音が大きくなってきた。 「さぁ、離れていなさい。君を巻き込むつもりはありません」 そっと剥き出しの肩を手で押されて、その手の熱さにハルははっと気付いた。 ――熱がある! 気付いたハルの行動は早かった。 「Io Trovai “Mukuro Rokudou”!」 男の叫び声が聞こえた。 骸が舌打ちして槍を構えた瞬間だった。 「骸さん!」 「ハル?」 彼女の声に振り返った瞬間、骸は言葉を失った。 |