再び裏路地に出ると、今度はボンゴレ邸へと続く別ルートへと向かって走った。 「・・・はひ、人が居ます・・・」 覗いた先にいる人を見て、それからちらりと骸を見あげると、彼は首を縦に振った。 あれもまた、敵だ。 「どうやらルート自体がばれているわけではないようですね・・・無駄に人は居る組織でしたから、適当にばらまいているのでしょう」 骸は深く溜息を吐いた。 その後他のルートも回ってみたが、見事適当に割り当てただろう敵の配置がピッタリと重なっていた。 が、もちろん入口から離れた場所にいたり入口の方を向いていたりと、そのルートがばれていないのがさらに骸達の苛立ちを誘った。 つまるところ、突破は出来ないのだ。 自分だけならなんとなかったかもしれない。目下にいるハルを見ながら考える。 けれど今の考えはハルに応急処置をされ若干体力が回復しているから言えることで、多分最初からハルが居なければ地下道で出血多量で朽ちていたかもしれない。 だからこそ、彼女を置いて入口に飛び込む考えは無かった。 目撃証言は既に全員に回されているだろう。 破って大分印象が変わっているとはいえ、破っているからこそ逆に目立つだろう。 そう考えると骸は無茶をしてでも飛び込むことは出来なかった。 「(まったく・・・甘くなったのは絶対彼の影響だ!)」 本日のハルの結婚式に非常に動揺していた彼を思い出して内心で叫んだ。 昔の自分なら、さっさと彼女を切り捨てただろう。 「はひぃ・・・どうしましょうか・・・」 「地下道も多分近くは人が配置されていることでしょうね・・・」 ふぅと短く息を吐いて骸は壁にもたれかかった。 どうやら風邪も悪化しているらしい。 じわりと血が滲んでいる右目に、そっと布の上から触れた。 大部分がこの右目の力を使っていたため、今幻覚のコントロールが取れない状況だった。 風邪で朦朧とする頭、傷を負いコントロールができない右目、体から流れる血による体力不足。 その全ての要因が幻術を妨げた。 「正面突破もダメ、別ルートもダメ」 幻術が頼りにならない以上、己の武器とあとは知謀に頼るしかない。 けれど風邪のせいか身体も上手く動かない(とはいえ雑魚を倒すには十分に値する程度だが)。 ふと、骸は自分の三叉槍を見た。けれどすぐにその考えを改める。 「(この少女の手を汚させたくないなんて・・・絶対に絶対に彼の影響ですよ!)」 長い溜息を吐いた。 そうして、ふと隣で動かないハルを見て、骸はハルの視線の先を追った。 「・・・なるほど」 それから深く頷く。 「ま、まさかですよね・・・?」 「おや、苦手ですか?」 首を傾げる骸に、ハルは否定の言葉を言いながら戸惑った。 「で、でも・・・」 「退路があれしかないなら仕方ありません」 二人してそれを見つめた。 「さて、少々拝借しますか」 |