一瞬にして集まった視線の中を骸は駆け抜けた。 そうして反応しはじめた敵を三叉槍でなぎ払う。 容赦のない攻撃に数人の敵が地面で転がりながら身悶えた。 「っ!」 その惨状ともいえる光景にハルは息を呑んだけれど、骸の右側を重点にあたりを見渡した。 とにかく切り抜けることが先決だ。 乗り込んで飛び立ってしまえばあとはどうとでもなる。 「骸さんっ!」 ハルの叫びに、骸は右側に三叉槍を振った、と同時に男の叫び声がする。 「ああなりたくなければ、そこをどきなさい!」 骸が声を張り上げる。 見もせずに攻撃された場所が悪かったせいで、先ほどの男は両目を抑えながら苦しみに悶えていた。 左側はまだ腹部などを抑えている状況だったが、右側から襲い掛かった敵は酷い状況だ。 少しずつ増えていく苦しみの声に、ハルはざっと顔を青ざめた。 けれど顔を逸らしている時間はない。 手近なそれに乗り込むと、骸はハルを座席に放り一気に蹴りあげた。 「きゃぁ!!」 大きな音に突然の震動、座席にしがみついてグラグラと揺れる機体にしがみついた。 「歯を食いしばっていなさい!」 骸の叫びに痛いほどに歯を食いしばった。 途端、バリバリバリ!と敗れるような音がして、その音は数秒後に聞こえなくなった。 そうして力一杯に閉じていた眼をそっと開いたハルの眼に入ってきたのは、空だった。 まるで彼のような大空。 そこにハルと骸の乗ったヘリが思いっきり駆け抜けた。 安定した機内に息をついて、それから後ろを確認した。 やっぱり着いてきている数機のヘリに、骸が舌打ちをする。 「まったく、しつこい連中ですね」 しつこい男はもてないんですよ、なんて軽く茶化しながら後ろに乗っている武器を目で確認していった。 時々パリンと割れたりする窓ガラスは、多分同じ物に乗っている敵の武器だろう。 「ハル、こっちへきてください」 突然呼ばれたハルが捕まりながら近寄ると、突然スティックのようなものと、レバーを持たされた(ちなみにハルには名前なんてものはわからなかった)。 「へ?」 わけがわからないまま操縦席に座らされて、ハルは今現在一緒にスティックとレバーを掴んでいる骸を恐る恐る見あげた。 そんなハルに、骸はにっこりと笑う。 「とにかく、僕の言うとおりに動かしてくださいね」 「え・・・ちょ、はひっ・・・!?」 おろおろと骸と前を交互に見ているうちに、骸の手が離れた。 「落ちなければ上等です!」 前を向いて!という叫び声にハルは真っ直ぐに前を向いた。 後ろでは骸が使っているのだろう数々の銃声がする。 「は、ふぇ、へ・・・い、やぁあああああああああああああああ――――――――――――!!!!」 ハルの叫び声はヘリのローターの騒音と骸が使っている機関銃の銃声にあっけなく消えた。 |