半ば地面に滑りながら突っ込んできたヘリに、呆然とした。 その機体は敵のものだったけれど、中にいるのは敵ではないと思った(第一敵ならこんな馬鹿みたいな侵入方法はしない)。 よく知っている気配と、そうしてもうひとつ。 「は、は、はひぃ・・・」 ずるずると彼女は這い出すように出てきた。 靴はどうやら混乱のうちに片方だけを残してどこかになくなってしまっていたようで、仕方なくもう片方の靴も脱ぎ捨ててはだしで降り立った。 髪もドレスらしきものも全てボロボロになっていたけれど、間違いない。 「――は、る・・・」 綱吉は無意識にその名前を呼んだ。 その後ろからハルに手伝われながら目や足やら腕に真っ赤に染まった布を巻きつけた骸が出てきて、クロームたちはすぐさま骸に走りよる。 急いで離れるとヘリコプターが数回火花を散らした後、真っ赤な炎を滾らせながら燃え上がった。 安心したように一息ついて、それから振り返った瞬間。 「ツナ、さん・・・?」 たった2年。 たったその期間会わなかっただけなのに、別人のように見えた(お互い、に)。 そうしてまた綱吉が口を開く前に、ハルは大きく息をすった。 「っばか――――――!!!」 ぶふ、と何時の間にか帰ってきていたヒットマンの年相応の笑い声が聞こえた。 本日二度目だ、と頭のどこかで思ったけれど、思考は追いつかなかった。 「ばかばかばかばかばかばか、ツナさんの大馬鹿ものぉ!!!」 子どものように繰り返される言葉に、綱吉は反応すら出来なかった。 後ろで家庭教師はゲラゲラと大笑いしていて、ハルはさらに言葉を続けた。 「危ない目にあわせたくないから、とか、そんなことでハルを置いて行った大馬鹿ものですよ!ツナさんは!!」 その言葉に、綱吉は反射的に声をあげた。 「なっ!だ、だって本当に危ないんだぞ!?」 「ばか!!」 やっと反論しはじめた綱吉に、ハルはその意見もすべて一蹴した。 「そんな危ない場所だから、尚更傍にいたいってことがわかんないんですか、この大ボケ鈍感阿呆まぐろ!!」 「ま、まぐ・・・!」 言葉を失った綱吉に、ハルはびしっと人差し指を向けた。 「いいですか、ツナさん!ハルはもうずっとここにいます!」 「なっ!!」 反論しようとした綱吉に、ハルはぎろりと睨んだ。 「もう一度ハルを日本に置いていこうなんて考えてみてください」 ボロボロのドレスのスカートを掴んで、ちらりと後ろの炎上するヘリを見て、下で聞こえる複数の声を見下ろした。 「絶対に――置いていったこと後悔させてやるんですから!」 炎上する炎をバックに、ハルは綱吉を半ば睨むように見て言う。 今現在他の幹部が手を焼いているだろう敵の声が聞こえていた。 とりあえず敵はねじ伏せればいいものの、書類は増え、周りへの隠蔽などなど、かなり大変な業務が飛び込んでくるだろう。 にこりと、ハルはこの場に合わないほどに綺麗な笑顔で笑った。 「とりあえず、これが2年間日本に置いてった分のツケですよ」 んべっと子どものように舌を出すハルに、綱吉は完全に力を無くした。 |