項垂れて膝をついていた綱吉を、ハルは近づいて思いっきり引き上げた。 「いいですか!ツナさん!」 間近に迫る顔に、綱吉はぐっと息を呑む。 やはり2年前と少し変わっていて、一気に大人びていた。 間近に迫るとはいえど身長差も高校の時から大分変わっていったため、今ではハルの頭は綱吉の肩程度にしかない。 「ツナさんのせいなんですよ!?わかってるんですか!」 「な、何がだよ!」 反射的に昔の言葉遣いをしてしまったが、誰も気にするものはいなかった(むしろそんな状況ではなかった)。 不思議そうな顔をする綱吉に、ハルは眉間に皺を寄せた。 ものすごく、彼女は怒っていた。 「折角ハルはツナさんを諦めようと思って結婚したのに、2年間の一日だってツナさんが頭の中から消えてくれなかったんですよ!?結婚式の時だってツナさんで頭が一杯で、相手の人のことなんて考えられなくなっちゃったんです!!」 どうしてくれるんですか! 呆然とする綱吉にハルはさらに言葉を続けた。 「相手はものすごく頭良くてスポーツできて性格良くて格好良くて素晴らしい人だったんですよ!なのに、優しいけどハルを置いて行く酷い人のツナさんしか浮かばないんです!」 その素晴らしい人の目の前で! 「その人がツナさんだったらいいなとか考えちゃって、相手の方の声を聞いてツナさんの声はもっと高かったなんて思い出して。誓いますか?って神父さんに言われたときに、ハルいいえって答えちゃったじゃないですか!結婚できませんって言っちゃったんです!」 入籍する前でよかったなんてちょっと考えちゃったんですよ! 何度も何度も連ねる言葉に、綱吉はどんどん頬が上気していくのを感じた。 これは盛大な、愛の告白だ。 「なんでハルの頭の中も心の中も全部侵食しちゃってるんですか!?ツナさんのせいで、ハルはツナさん以外考えられなくなっちゃったんです!どんな人よりもツナさんのほうがいいって思っちゃうんです!どんな人がいたって、ツナさんしかだめだって思っちゃうんで――」 思わず綱吉はハルの身体を抱きしめた。 「ハルっ・・・!」 抱きしめる力は酷く強くて、でも優しかった。 風邪の熱とは違う熱さに一瞬身を竦めると、綱吉は擦り寄るように顔を左右に動かした。 「置いていって・・・ハルが結婚するって聞いて、ものすごく後悔した」 掻き抱くようにさらに引き寄せられて、ハルは息を呑んだ。 「ツナさ、」 背中に手を回して、答えるように強く抱きしめた。 「本気で掻っ攫ってやろうかと思った・・・」 「っ、攫われる前に、逃げ出して来ちゃいましたけどね・・・」 えへへっと笑うハルに綱吉は馬鹿、と笑った。 「ハル、ハル・・・好きだよ」 やっと言える。 もう離さないとか、そんな格好いいこといえないから、たった一言。 傍にいよう。 「ハルもっ、ツナさんが好きです・・・!すき。だいすき!」 そうして花嫁は新郎じゃなくって攫うはずだった魔王の胸へと飛び込みました、とさ。 「・・・ところで、さっさとあれなんとかしてこいよ」 「・・・あー・・・」 下で勢力を増していく敵に、綱吉は溜息を漏らした。 |