次の日、ハルは泣きはらした顔をしていた。 蹲って泣いていたことも、綱吉の姿を見て目を見開いて逃げ出したことも、そのあとの綱吉と俺の会話も。 全部全部、ハルの中におおきなしこりを残して、泣きそうな顔を作る。 それでもハルは、自分は笑っているんだと思っている。 「おはようございます!ツナさん」 「おはよう、ハル。今日も早起きだね」 「そりゃツナさんに一番におはようございますって言うためですから!」 決して直ることのないハルの癖であるはひーという言葉を叫びながら、ハルが泣きそうに笑う。 その口癖も、多分綱吉の中で今ではなくてはならないものになってると思う。 ハルが笑って首をかしげる度に、短い髪がさらりと揺れた。 京子に近づかれることが怖くて、綱吉に何か反応してほしくて、思いついた髪を切るという行為。 あんなに、あんなにも綺麗だったのに。 真っ黒でキラキラと光っていて、しっとりとみずみずしいのに風に吹かれるとサラサラと糸が舞う。 京子そんなハルの髪に憧れて、髪を伸ばしていた。 それは、綱吉の好きな京子が自分のマネをするという酷く変な感覚をハルに与えていて。 「ツナさん?どうかしましたか?」 ハルは泣きそうに笑う。 真赤な目で、バレバレなのにバレないように必死に泣きそうに笑う。 「いや・・・ううん、その・・・」 ・・・綱吉の顔が変だ。 漸くハルの髪を意識したのか、綱吉の視線はハルの髪にそそがれていた。 今更かよ、馬鹿ツナ・・・って、何で俺は立ち聞きなんてしてるんだろう・・・。 「はい?」 「その・・・髪・・・」 ハルの髪は本当に長くて、太ももくらいまであった髪は一度も別の色になることはなかった。 そんなもの興味はないみたいに、いつだって真っ黒で、それが凄くきれいだった。 真っ黒で真っ黒で、それで凄く光輝いていた。 今は、肩にもつかないくらいに短い。 「はひ?紙?」 きょとんとハルが目を見開く。 分かっているのに惚ける癖だけは、うまくなっていった。 私は何もわからないと、なかったことにする。 それは凄く哀しいことなんだということはハルの意識にはなくて。 もちろん、綱吉の意識の中にもなくて 「えっと、ハル、その」 ハルは泣きそうに笑う。 蹲って泣いていたことも、綱吉の姿を見て目を見開いて逃げ出したことも、そのあとの綱吉と俺の会話も。 全部全部、ハルの中におおきなしこりを残して、泣きそうな顔を作る。 だけど、綱吉は多分気づいてない。 「なんですか?ツナさん」 綱吉が躊躇ってから、それから意を決したように言った。 「その髪、ハルに似合ってる」 |