その言葉が返ってくることを、知っていた。
知っていたけど。


「ハ、ル・・・ごめ、見ないで、く、れ・・・」
目の前に浮かんできた涙は止めることができなくて、溢れ出す涙を止めることなんてできなくて。
じわじわあふれて、声が震えて、情けないほどにしゃがみ込むことしかできなかった。

ハルも、泣きそうだ。


「ごめん、なさい・・・」

ついにハルの大きな瞳から涙がこぼれて、滴になって落ちる。

「ごめんなさいっ、ごめんなさ、い・・・っ!ハルは、ハルは・・・貴方のことは、大好きなんです!」
焦ったように、俺を傷つけないようにだろうか、必死になってハルが言う。
でも、言葉はごめんのくせに、ずるい。

「泣いてるときに一緒にいてくれて、たくさん支えてくれて、応援もしてくれて・・・なのに、ハルは何もできなくて・・・。好きになれたらとても幸せになれるんだろうって思いました。幸せなんだろうなって・・・だけど、でも」

しゃくりあげる。
俺の方がもっと泣きたいくらいなのに、ハルは卑怯だ。


「ごめっ、なさ・・・っ!ごめんなさい、ごめんなさいっ!ハルは、ハルは、ツナさんが好きなんです。ハルは、ツナさんじゃなきゃダメなんですっ!」



ここ最近、ずっとハルは泣きっぱなしだ。
もう目は真っ赤にはれあがってるっていうのに、またハルは泣く。


「ひとつ、聞いてもいい?」
頬を流れている涙はそのままで、ハルにほほ笑んだ。
「・・・は、い」


もしかして、と思っていたけど、でもそんなことはないだろうと優しさにすがっていたけど。
一度だけ聞いておきたいんだ。

「俺の気持ちは、迷惑だった?」

「そんなことあるわけないじゃないですかっ!!!」
間髪入れずに返ってきた言葉に、思わず安心する。
ふざけるなとでもいうように叫ぶハルの言葉に、笑みを深くした。

「それなら、いいんだ」


ハルが綱吉を好きだなんてことは、ずっと知っていた。
それでも勝手に好きになったのは俺だった。



「・・・ハルを、好きに・・・」

そこまで言って、ハルが突然口を閉じた。
涙を流しながら、一度うつむいて顔をあげる。

「ハル?」
涙でいっぱいの顔をくしゃくしゃにゆがめて、笑った。



「ハルを、愛してくれてありがとうございました」



思わず、つんと来てまた涙がこぼれだした。
ああ、だから俺は君を好きになったんだと思う。

一直線で頭が良いくせに考えなしなところがあって、優しくて芯が強くてたくさんの弱さと強さを持っている。


君を好きになれてよかった。


「・・・俺こそ、ありがとう・・・!」



君を、愛せてよかった。





愛が届いた日



( 君がありがとうと笑ってくれたから、僕は明日も笑えるよ )