正直、ええー?って思った。 だってさ、桜の花が咲いて期待に踊る入学式の日だよ? 何で俺は黒ずくめのスーツの男たちに追いかけられる同じ制服の少年を見かけなければならないんだろうか。 ・・・夢だ、うん、夢だよな。 「待て!」 「待てって言われて待てるかー!!」 いやー、それにしてもリアルな夢だなぁ・・・。 風は気持ちいいし、叫び声はクリアに聞こえるし、銃声もしっかりと・・・って、銃声? ああもう、くそっ!明らかに夢じゃないっ!! 「そこのやつっ!こっちっ!!」 ああもう、何で俺はこんな面倒なことに首を突っ込んでしまうタイプなんだろうっ! 自分で自分を呪ってやりたいよ、本当。 でも追われてるこいつを放っておくこともできなくて、手をつかんで走り出した。 「うわっ、わっ!」 「こけるなよっ!こけても助けないからな!」 むしろ助ける余裕なんてないから、こけたらそのまま引きずってくぞ、おい! 後ろでそいつは必死にバランスを取って走って付いてきて、そのまま学校に向かった。 道端で助けを求めるよりは確実で逃げ場もたくさんあるしな。 それに、確か並高には最強と謳われる雲雀恭弥と六道骸とかいう不良の頂点がいるらしいし。 「だーっ!!」 驚いてこっちを見てくるやつらを気にせずに走って、そのまま校舎の中へと突っ込んだ。 ばっと後ろを振り返ると、そこには不思議そうに見てくる他の生徒ばっかりで、あの黒ずくめの男たちはいなかった。 まけた・・・かな? 「っと、大丈夫か?おい」 はーと長く息を吐くそいつを見て、俺はひとまず無事かと息を吐いた。 「だ、大丈夫。ごめんね、変なことに巻き込」 「十代目ー!!!!」 と、そいつの言葉を遮るように声が聞こえた。 「は、隼人・・・」 「すみません十代目っ!俺が倒れたばっかりに十代目を一人で行かせてしまって・・・あ?誰だてめぇ・・・」 手をつかんだままだったらしくて、俺に気づいた隼人っていうやつが俺をにらんできた。 「隼人、この人は追われてた俺を助けてくれた人だよ」 「なっ!も、申し訳ありません十代目っ!俺がついていればそんな奴ら、すぐに果たしてやったというのにっ!」 果たすって何だ?っていうか、十代目って一体何? 「えーっと、十代目君と、隼人、だっけ?」 「え?・・・ああ、ごめん。俺は沢田綱吉。十代目は愛称っていうか・・・なんて言うか。新入生なんだ」 「呼び捨てすんじゃねぇよ!・・・俺の名前は獄寺隼人だ」 にこやかに言う綱吉と違って荒らぶる挨拶をする隼人に、思わず笑いそうになった。 なんか、面白いやつらだな。 「綱吉に隼人な。わかるとは思うけど、俺も新入生」 いやはや、高校生活は楽しくなりそうだな。 「よろしくな」 |