初めて見た時は、元気で明るい女の子だなぁと思った。

猪突猛進。
綱吉に突っ込んで、抱きついて、怒られた後、悩みなんてなさそうな笑顔で笑う女の子。

綱吉を好きならしいけど、綱吉は京子が好きで、報われない片思いをしてる。
まさか気付いてないなんてことはないとは思うけど・・・多分。


「ツナさーん!」

もしかしたら気づいてないかも、なんて思った。
だってそれくらい彼女は綱吉に関係なく笑顔で笑って抱きついて、そして満たされたような顔をしていたから。


「わっ、ハル・・・」
驚いた顔をした綱吉がふと笑みを浮かべて、それから慌てたようにむっとした顔をつくる。

あーあ、そんな顔しちゃってさ。
お前京子が好きなんじゃないのかよ。

人の恋路は複雑だなぁ、なんて思ってた。


「あーもう、離れろよっ!」
ぱっと綱吉がハルの腕を振り払う。

いつもめげないから凄いよなぁ・・・本当に。
すぐに笑顔でまた飛び付くし。
そう思いながら俺は何気なくハルを観察してた。


振り払われたハルは、


「・・・・・・あれ?」


いつも笑顔のハルの顔が、歪んだ。

泣きそうな顔で綱吉の背中を見つめて、ぐっと唇を結ぶ。

振り払われた手を強く握って、息を吸って吐いた。


そうして、また笑う。


「もー、ツナさんは照れ屋さんですねぇ」
そういってするりとまた腕を組む。


笑って腕に抱きつくハルに綱吉は呆れたような顔をして仕方ないなという感じで笑う。
それは隼人や武も一緒で。

一緒?

誰も、あのハルを見なかったっていうことか?
何人も人間がいて、俺以外誰も気付かなかったのか?


嘘だろ?


誰もハルのあの泣きそうな顔に気づかないでいるってことか?
誰一人。



ふと、ハルと視線があった。
目を見開いて、それから困ったように笑った。

熱が体の奥から競り上がる。
左胸あたりにある心臓が大きく跳ねた。

人の恋路が複雑だ?自分のほうが複雑だよ。


泣きそうになった。
彼女のあの表情を見たのは俺だけだと優越感に満たされ、何も知らない綱吉に苛立って、ハルを今すぐにでも抱きしめたい気持ちになっていた。



ああ、俺は彼女が好きだ。





君に恋をした、瞬間



( それは今すぐにでも君を彼から奪い去って抱きしめてしまいたくなるほどの、情熱 )