「・・・あ」

また、ハルの手を振り払ってしまった。
振り払われたハルは少し目を見開いていて、それに胸がチクリと痛んだ。


・・・でも、間違ってない。だって、俺は京子ちゃんが好きなんだから。


そう考えてるとハルがにっこりと笑って、また俺の腕に抱きついてくるのにほっと安心した。
良かった、傷ついてないみたいだ。

「もー、ツナさんってばシャイなんですから」

ふふっとハルが笑う。
ぎゅっと抱きついてきた温度は暖かくて心地良かった。
隠すように仕方がないな、なんて笑ってハルを受け入れる。



「ハル」

ふと、アイツがハルを呼んだ。

「はひ?どうしました?」

するりと腕が外れた。


「ん、ちょっと」
手まねきされるままにハルがアイツに近づいて、少し話をしたかと思うと、アイツが教室を出て行った。

「ツナさん、ちょっと行ってきますね!」
ハルがそう笑うと、アイツに続くように教室を出て、その後すぐにチャイムが鳴って先生が入ってきた。


何を、話してたんだろう・・・って、おれには関係ないじゃないかっ!俺が好きなのは京子ちゃんなんだから。
首筋にチリチリとしたものが走った。
ハルはいつも真面目に授業を受けてるから、たぶんちょっとくらい遅れてきたって怒られないよ・・・だから、早く帰って来いよ。


けど、その時間ハルとアイツは帰ってこなかった。




「あの・・・十代目・・・」
恐る恐るといった感じで話しかけてくる隼人に、俺は反射的に笑顔を返した。
「ん?な、」


「はひー!もう、授業が終わっちゃったじゃないですかっ!」
話しかけようとした瞬間、ハルが帰ってきた。

「悪い悪い。だってさ、屋上のあの暖かさの誘惑には負けるからさ」

アイツと、一緒に。


「う・・・。それは、否定できませんけど・・・でもでも!ハルは真面目に授業を受けてたんですよ!」
「じゃあ大丈夫、これくらいじゃマイナスされないって」
あははと笑って、ハルが困ったように笑ってアイツを見る。
ハルの目は、依然俺の方を向かない。


「あの二人、付き合ってるのかなぁ」
誰かがポツリと呟いた。



そんなはずない。

だって、ハルは馬鹿正直だからアイツと付き合うことになったら必ず言うだろうし。
それに、だってハルはいつも俺にくっついてきて好きだって言ってるんだから、そんわけない。

首筋を、チリチリとしたものが走る。


未だにこっちを向かないハルを見てると、ハルの目の端が赤くなっていた。
何で、ハルとアイツが二人っきりで屋上に行ってるんだよ・・・・。何で、アイツはハルを誘って、ハルもそれが当然みたいについていって。


ああ、えっと・・・そうだった、俺は京子ちゃんを、好きな、はずなんだ。





君は僕を好きなのに



( 君の想いには答えられないと繰り返すのに、君の手が誰かの手を取るのが嫌なんて )