私は多分、世界で一番最低な人間だ。 「ツっ君、ちょっといいかな?」 「?どうしたの?京子ちゃん」 まず、彼のお母さんの呼び名を可愛いなんてマネして、そう呼ぶようにした。 呼び名が変わっただけなのに、まるで心が近くにやってきてるみたいだった。 「うん、ちょっと」 大切な友達が、彼のことを好きだって知ってたのに。 ついていきたいって言った私を止めるツっ君に押し負けて呆然としていた時、たくさん支えてくれた。 ――それでいいんですか!?京子ちゃんはツナさんについていきたいんですよね!? そう言ったハルちゃんはきっと、私の心を知ってたのかもしれない。 ついていけないって愕然としてた心を慰めてくれたハルちゃん。 私も、ハルちゃんのためならなんでも協力してあげようって思ってる。本当だよ。 でも、ツっ君だけは譲れない。 ごめんね、ハルちゃん。 「あのね、ツっ君に聞いてほしいことがあるの」 ほぼ毎日に近いくらいに電話をする花だって言ってた。 ――沢田は京子のことが好きだったよ。だから安心しな! 私ね、中学生の時に気づいてた。 ツっ君が私にやさしい目を向けてくれること。 凄く凄く嬉しくて、だけどツっ君たちの周りのおかしなことが怖くて、見てないふりをした。 最低だね、私。 でも、もうちゃんと見れる。怖いからって見ないふりなんてしない。 「何?」 ツっ君がやさしく微笑んでくれる。 だけどね、見てたら変なことに気付きそうになったの。 あれ?って首を傾げた。 ツっ君の目はとても優しい。優しいんだけど、なんだか違う気がするの。 「ツっ君、わたし、ね」 お仕事の話、私にはしないのにハルちゃんにはするんだね。 私はまだ「ちゃん」をつけるのに、ハルちゃんは最初から呼び捨てだったよね。 どんどん嫌な女の子になっていくの。 ツっ君は、誰を見てるの? 焦ってた。ものすごく焦ってた。 ツっ君を失いたくなくて、ツっ君に傍にいてほしくて、私、焦ってた。 まだ、間に合うんじゃないかって思ってるの。 「私、」 でも、首を振られてもいつものままでいよう。 泣いちゃったりしないようにしよう。 きっと、ツっ君が頷いてくれたとしても、ハルちゃんはいつもの笑顔で笑ってくれるだろうから。 だからきっと、私もハルちゃんに負けないようにしよう。 「私、ツっ君が好きなの」 精一杯、笑った。 |