ツっ君が一瞬真赤になって、躊躇いながら口を開いたとき、もう答えは分かってた。

分かって、たの。


「京子ちゃん・・・俺、」
「・・・うん」

でも、ツっ君の口から言葉が出るのをずっと待ってた。



「ごめん」



思ったよりショックじゃなかった。
もう、何となくわかってたからなのかな。

「ううん、いいの。気にしないで」
「俺、京子ちゃんのことは好きだったんだ。好きだった・・・だけど」

「今は、ハルちゃんが好き、なんでしょ?」

まだツっ君の口から聞くのは辛くて、わざと先回りをした。
知ってたの。

「・・・うん」


ツっ君の優しい目が誰に向いているかなんて、そんな簡単なこと。
だけど認めたくなかったんだ。

私もいつの間にかツっ君を好きになってたから。


「頑張ってね!ツナ君!」

きっとこの後ツナ君はハルちゃんに告白する。
そしたらきっと今度はハルちゃんがツナ君をツっ君って呼ぶんだろうな。

振られちゃったけど、ものすごく悲しいけど。



「幸せになってね」

本当にそう思った。




いつから意識し始めたのかわからない。
けど、気づいた時には確実に心の中にいた。
帰るたびに笑っている顔を見ると心底ほっとしたりした。

ハルが髪を切ったとき、俺のことを諦めたんじゃないかって思った。
そんな権利、ないのにな。

その時に気づいた。俺、ハルが好きだったんだって。


ごめん、本当いまさらすぎるよな。



京子ちゃんが帰ったあと、俺は執務室にハルを呼び出した。
京子ちゃんがあんなにも勇気を振り絞って言ってくれた言葉を、俺は断ったんだ。

その分だけ俺も、勇気を振り絞りたい。


「はひ?ツナさんどうしたんですか?」
首をかしげるハルに俺は思わず笑いそうになった。

「うん、あのさ、俺」

息を吸った。手に汗を掻きそうで、ちょっと笑った。バクバクなる心臓をなんとか無視しておいた。

緊張する。
告白ってこんなにも大変なことだったなんて、今初めて知った。



「俺、ハルが好きなんだ」


そう言うと、ハルが満面の笑みで笑った。


「ハルも、大好きです」





君から貰った勇気を武器に



( ありがとう、僕を好きでいてくれて。ごめんね、君を好きになれなくて )