「ハルちゃん、ツナ君。パーティに行くって本当?」



パタパタと可愛らしい音がして小さなノックに返事をすれば、入ってきたのは綱吉の予想通り京子だった。
目を欄欄と輝かせている京子に、お茶会をしていた綱吉とハルは眼を見開きながらも頷いた。

「は、はひ・・・。行きますけど、情報が早いですね、京子ちゃん」
「ふふ、医療班だもの。患者さんからの情報って多いんだよ?」

人差し指を口にあて意地悪そうに笑う京子に、ハルは苦笑した。
人の口に戸はたれられない、というのはこういうことを言うのだと思う。京子のように天使のような看護士の前ではなおさら。


「ねぇ、ハルちゃん。ドレスはもう決めたの?」
「え?・・・ああ。ハルはスーツで行こうとおも、」
「駄目!パーティで、しかも主役の人には娘がいるんでしょう?なめられちゃうよ」

怒涛の勢いで捲くし立てる京子に半ば呆然としながらハルは見上げる。
ちらりと綱吉に視線を向けるものの、困った笑みを返すだけだ。


「私ハルちゃんに来てほしいドレスがあるの。ツナ君の趣味は微妙だから!」
「ちょ、京子ちゃん・・・そんなこと・・・ないと・・・思う、んだけど・・・」


そりゃ、確かにあの一癖も二癖も・・・それどころか一億癖もありそうな守護者達をかわいいなーとは呟いてるけど。
それを聞かれてイーピンに「ツナさん・・・疲れてるんですか・・・」って言われたけどっ!!


「って、もういないしっ!」
云々考えている間にどうやら京子はハルを連れ出してしまったようで、情けなく半分開いた扉だけが後に残った。




「このドレスを見て、ハルちゃんに似合いそうだなーって思ったの」
「はひ!ありがとうございます!」
京子にドレスを手渡されて、ハルはそれを大事そうに抱えた。

真っ白なドレスだった。
一番上から一番下まで、その白さは何にもさえぎられることなく純白を彩っていて。
その白さにハルはほぅっと息を吐いた。

「さ、着替えてみて」
にっこりと笑う京子に誘導されるままに、ハルはそのドレスに袖を通した。



「わぁ!可愛い!」

ひざ上という可愛らしさを思わせるデザインなのに反するようにぱっくりと開いた背中は眩い。
装飾は何もつけなくていいと思った。

むしろ、つけちゃいけない。



「どうかな?気に入ってもらえた?」
「はい!すごく素敵です!」
喜ぶハルに笑顔を見せて、京子はそっとそのドレスに触れた。

「すごく素敵だと思ったの。これなら、目立つし」
「はひ?目立ち・・・ますかね?」

普通パーティ会場には白はありふれた色だろう。そう告げると京子が苦笑した。

「うん。でも、目立つの・・・・・・・・・・・・何かあったら」

「はひ?京子ちゃん、何か言いましたか?」
「ううん!何でも」
首をかしげるハルに京子は笑顔を返した。


「ツナ君に見せておいでよ!後片付けはしておくから」
「はい!」

輝くような笑顔で歩き出したハルの後ろ姿に、京子は眼を伏せた。


「・・・お願い。何も、起こらないで」

願わくば、あなたが純白のまま笑顔で帰ってくるように。





真白に願いを託す



( どうか、どうか、どうか、お願いします。願うのはたったそれだけ )