ねぇ、本当だよ?
失われないためなら、なんだって・・・そう、何だって出来るんだよ。




シャンデリアの光やそれを反射するテーブルクロスの白。

何度付き人としてやってきても慣れない光景に、ハルは息を吐いた。
最初はポカンとして口をあけてしまって綱吉に笑われてしまったのはご愛敬である。


「ハル、ドン・カルツォッネのところに行こうか」

すっと腕を折り曲げた状態で差し出すと、ハルがきょとんとした。
うん、やっぱり凄く可愛い。

ドン・カルツォッネの娘がどんなのかは分らないけど、多分絶対かなわないと思う。
昔からただでさえ美少女だったのに、今じゃ大人っぽくなって美女になったと思う・・・決して、彼氏のひいき目とかじゃないから。

ずっと一緒にいたのに、ふとその変化に気づいてひどく焦った。


「はい、ボス・・・いいえ、綱吉さん」

こういう場所では普通に綱吉と呼んだ方がいいというのはリボーンの案だ。
あだ名は親密さは出せるけれど、子どもっぽさが浮き出て入り込めない恋人・・・という感じがしないらしい。
よく分らないけど、愛人がいるリボーンならではだと思う。



ドン・カルツォッネの近くに寄っていくと、その本人と20歳くらいの女性。多分あの人が娘なんだろうなぁ。
「今晩は、ご招待ありがとうございます、ドン・カルツォッネ」
「おお!ドン・ボンゴレ!こちらこそ来ていただいて・・・おや、こちらは?」

この好色狸め。あきらかに品定めするような視線からハルを護るために、俺はハルの腰を引き寄せた。

「ああ、紹介が遅くなってしまい申し訳ありません。俺の恋人の三浦ハルです」
ピクリとドン・カルツォッネの娘の眉が動いた。


「初めまして、三浦ハルと申します。ドン・カルツォネ、本日はお招きいただき、誠にありがとうございます」

ハルはリボーンに散々マナーというマナーを叩き込まれてるから、詰まることなくサラサラと礼を述べて頭を下げた。
今日ハルはボンゴレ夫人としてたった一つのミスも許されない。
だから俺は、それをできる限りフォローしてあげるしか出来なかった。

「お、おぉ・・・そうですか。お美しい方ですね。・・・こ、こちらは娘のエリシルと申します。エリシル、ごあいさつを」

・・・大分動揺してるな、ドン・カルツォッネ。まぁ、恋人がいるなんて吹聴したことが無いから、自分の娘を当てようと思ってたのが外れたからなんだろうけど。
そうして動揺してる父親に対して娘は落ち着き払った表情で頭を下げた。


「初めまして、ドン・ボンゴレ。エリシルと申します。エルとお呼びください。・・・それにしても、ドン・ボンゴレに恋人がいらっしゃったなんて、初耳ですわね」

「初めまして、Ms.カルツォッネ。私は心が狭いもので、誰にも知られずに閉じ込めておきたかったんですよ」


Ms.カルツォッネの唇がわなわなと震えた。あ、明らかに拒絶しまくったの目に見えてるかな。
思いっきりファミリーネームで呼んだし、閉じ込めておきたかったってことは、そっちの思惑がわかった上でお前との婚約がいやだから仕方がなく連れてきたんだよ!って感じもろ出しだし。

あっはっは、失敗したなぁ(嘘つけ、と家庭教師の声が聞こえたような気がした)。



「綱吉さん・・・睨まれてますよ」
抱き寄せてたせいで近い距離にいたハルがこっそりと呟いた。
その声にMs.カルツォッネの顔を見ると、もの凄い表情で俺とハルを睨んでいた。

「うーん・・・また今度気を付けるよ」
こっそりあはっと笑うと、ハルが困ったように眉を寄せた。


「・・・ところで、離してくれませんか?ツナさん」
「無理」





君が好きすぎて



( ねぇ、本当に何だって出来るんだよ、本当の本当だよ )