「綱吉君、さぁ指示をなさい!」
一番近くにいた骸が綱吉の背に沿うように立ち構えた。


「なさいって偉そうだな、お前っ!敵を懲らしめて!・・・あ!殺すなよ!」
「さぁ?どうでしょうね!」
「どうでしょうってお前っ!!」

殺すなという綱吉の言葉に生返事するように飛び出した骸の後ろ姿を見やって、綱吉はため息を吐いた。
まぁ、多分・・・というか絶対ちゃっかり聞いていて殺さないでいてくれるだろうし・・・いいや。


その骸に遅れるようにやってきたのは恭弥だった。

「綱吉、咬み殺していい?」
「咬むまでに限度しておいてくださいね」

「やだよ」
べっと舌を出して敵へと走っていく恭弥にはぁと綱吉はまた溜息を吐いた。


「うん、でもまぁ・・・たぶん恭弥さんも殺さないだろうし」
その代り、殺さなかったんだから当然でしょ?って何か要求してくるんだよなぁ・・・。



「ボス」

ふと声をかけられて振り返ると、そこにはにっこりと笑うクロームが居た。
「クローム!」

「私はハルと一緒に避難誘導してくるわ」
「ん、お願い」

うんうん、命令を従順に聞いてくれるのはクロームと隼人と武くらいのものだよなぁ・・・。
後のやつらと言ったら文句タラタラで、レベルをあげろだの何だの、しかもやたら暴れまわってくるし・・・。
昔そのことで俺が一度守護者達との会合の時に怒ってから、報告書出すときこっちの反応気にしてるのが可愛いよなぁ。

・・・ああ、これこんなことに可愛さを求めなきゃいけないほど癒しが足りないんだろうか。

こんなにも若いのになんでこんなにも苦労してるんだろう・・・と綱吉は敵を倒しながらため息を吐いた。
正直、こんな考え事をしていても足りる敵だった。

会場の奥の方を見ると、先ほど一番騒いでいたドン・カルツォッネがやっぱり一番叫んでいて逃げ惑っていた。
・・・やっぱり馬鹿だった・・・。



「十代目!お待たせしました!」
綱吉の右隣に隼人が駆け寄った。

「ツナ、またせたのな!」
肩に普段は木刀の姿をしている刀を持ってきた山本が走り寄ってくる。


ちらりと入口の方を見ると、誘導をしながら不安そうにこっちを見てくるハルと視線があった。


「大丈夫・・・」
小声でつぶやいた声が聞こえたかのように、ハルはゆっくりと頷いた。
それに綱吉も頷いて返す。


昔のように銃を撃たれなくてもよくなった。
死ぬ気丸を飲まなくてもよくなった。

ただ、念じるだけでいい。

死んでも死にきれねぇなんて言葉も言わなくていい。


ただ、ただ。


君を護る、そう念じるだけで――





戦いの炎は修羅となり宿る



( こぶしを握り、君を護るという願いと決意と覚悟だけを強く強く握って )