ポロリと、綱吉の頬に一つ・・・涙が零れた。 くしゃりと顔を歪めて、まるで子どものように唇を噛んで嗚咽を堪えながら涙を零す。 「ハルがっ、うた、れたんだっ」 「・・・ああ、聞いた」 出来るだけ、優しい声で。 いつもの苛立ったような声とも、脅すような低い声とも違う、まるで頭を撫でるように。 さらに綱吉の瞳からは、まるで14歳のころのように涙が零れる。 「ハルが、わら、った、んだ・・・」 「笑った?」 眉を寄せる。 ぎゅうっと胸のあたりの服を掴み、子どものように泣きじゃくる綱吉がこくりと頷いた。 ぐっと堪えて、啜りあげる息の音が聞こえる。 「わら、うんだ・・・大丈夫ですか、って」 黙って、それを聞いていた。 クロームは静かに涙を流していて、じっとつま先を見つめていた。 骸は痛ましげに目を伏せていて、隣の恭弥も同様だった。 隼人は血がにじむほどに唇を噛みしめながら俯いていて。 武は一人穏やかに指を組んでいたけれど、その組んだ手は甲に食い込むほどだった。 「いつもと、一緒、なんだっ・・・!」 バンっと堪え切れない想いを吐きだすように、綱吉が強く机をたたいた。 手は真っ白になるまで強く握りしめられていた。 「・・・どういう、ことだ?」 こんな優しい声を出したことは、いままでなかっただろう。 それほどに、リボーンは優しい声で綱吉に問うた。 「一緒なんだよっ!!ハルが普通に過ごしてるときと、俺と逢うときとっ!!いつもの元気な状態と変わらない笑顔で、血を流しながらっ!!言うんだっ!けがはないですかってっ!!」 バン、バンと綱吉が癇癪を起こす子どものように机を叩いていた。 その手は胸で服をつかむ手とは正反対に真赤になっていく。 「全然痛そうじゃないんだっ!本当は痛いはずなのにっ!・・・笑うんだっ!」 一層、救いを求めて泣く赤ん坊のように、無防備に叫ぶように泣いた。 「笑ったんだっ!!俺を助けられたらそれでいいみたいにっ!」 バンっとさらに強く、綱吉が机を叩いた。 呆然とする者と、うつむくものに占められた会議室の中で、ただ綱吉の叫び声だけが響く。 まるで生まれたての赤ん坊が酸素という名の救いを求めるかのように。 「笑いながら、血を流しながら、俺のことを心配するんだっ!!」 しん、と痛い沈黙が漂って、綱吉は俯いたままポツリと呟いた。 「京子ちゃんを助けたのは、京子ちゃんのためじゃない・・・」 「え?」 きょとんとビアンキが綱吉を見上げた。 「京子ちゃんが怪我したら、誰が悲しむ?俺だ。俺のために、ハルは身を投げ出した・・・」 全ては、真っすぐに向けてくるあの視線が語っていた。 「ハルは、俺のためなら、人を殺せるよ」 |