「京子ちゃん、ジャガイモ切り終わりましたよ」
「うん!こっちも完成!」

目の前で切り終わった具材を見て、うんと満足げに頷く。
ジャガイモはボウルに入れた水の中でプカプカと浮いていて、となりに並んだお肉はどでんとまな板の上に置いてある。


「何を作ってるんだ?」

先ほど食糧庫への案内を頼んだリボーンがキッチンへと足を踏み入れた。
まぁ、材料から大体予測はつくけれど、あえて聞いてみるのも楽しいものだ。

大きな鍋を取り出した京子と、おたまを取り出したハルがきょとんとリボーンを見て、楽しそうに笑った。
「カレーだよ!」
「はい!」
「予測はついてたが・・・何でまた」
その選択に疑問を抱いていたリボーンに、どこか安心させるようにハルは一層笑みを深めた。

「・・・京子ちゃんとハルの作ったカレーが食べたいって・・・ツナさんが」

「・・・ツナが?」

ピクリ、とリボーンの眉が揺れる。
そんなリボーンにもう一度にっこりと笑ってから、繰り返した。

「はい、ツナさんが」

隣できょとんとしている京子にハルはにっこりと笑う。

ハルの様子にどこか合点が言ったように眉を寄せて、リボーンはにやりとした笑みを浮かべた。
「・・・そうか・・・。もちろん、俺達の分もあるんだろう?」
「うん!たくさん作るから、一杯食べてね!」
楽しみにしてると笑って、去っていくリボーンの後ろ姿を見送って、再び作業へと取り掛かる。

精一杯の想いをこめて。




「・・・京子ちゃん」

ふいに、声をかける。
先ほどの会話とは打って変わって沈んだ声に、京子が不思議そうにハルの方を向いた。


「ハルちゃん?」
「ハルは、京子ちゃんに隠しごとができました」

ハルの方は京子の方を向くこともなく。
じっと、ただ具材に目を向けたまま呟くように話す。

「二人で、一緒に出来ることを頑張ろうって言ったばかりなのに・・・」
ついには手を止めて俯くハルに、京子は一度目を閉じた。

二人の手が止まって、防音された室内には鳥のさえずりさえ聞こえない。
そんな中、ゆっくりと目を開く。

「・・・私が、ツナ君たちのことを知った時、二人で決めたよね」

「え?」

振りかえると、そこにはまっすぐにハルを見つめる京子の目があった。

「何にも言わなくてもいい・・・でも、何でも言って。何だってするからって」
「あ・・・」

二人でこっそりと額を突き合わせて決めたこと。
自分たちが何をしてるかとか、どういうことをするんだとか、理由なんて言ってくれなくてもいい。
でも、何かしてほしいっていうことを言ってくれたら、何だってしようと。

綱吉達のために。


「だから、ハルちゃん。何も言わなくてもいいよ。ただ、何かあったら何でも言って。何だってするから」
「・・・はい」
思わず目の前が潤みそうになって、ぐっと目に力を込めて耐える。
そのまま、たぶん歪んでるんだろうと思いながら、ハルは笑った。



「それじゃあ、ツナ君達においしいカレーを食べてもらうために頑張ろうか!」
「はい!京子ちゃん!」

何にも聞かないよ、何も言わなくていいから。
だけど、もし助けてほしいと手を伸ばしてくれたなら。

何としてでも、その手を引っ張り上げてみせるから。





しんゆう



( 貴方は私の大切な )