「ハル、そこに座んなさい」 ビシっと指をさされた場所、ソファに促されるままに座って、ハルは綱吉を見上げた。 眉を吊り上げ腰に手を当て、むっと口をへの字にして閉じている綱吉の顔は若干白い。 ひょっとして、また具合悪いんでしょうか・・・。 最近ハルと京子が一緒に作ったご飯を食べているけれど、今まで食べれなかった状態なのに急に食事をするのは負担になるんじゃないだろうか、と思う。 食べてくれる綱吉の姿が嬉しくて、ついついたくさん食べ物を作ってしまうのだけれど。 ・・・でも、シャマルさんにストップもされてませんし・・・大丈夫ですよね。 「ハル、どうして俺が怒ってるかわかる?」 「ツナさん、具合悪いんですか?」 「え、いや、大丈夫だけど・・・・・・って違うっ!!そういうことじゃないって!」 思わず昔の口調に戻って突っ込む綱吉の声を聞きながら、ほっと一安心する。 とはいえ、綱吉の大丈夫ほど信用できないものはないのだけれど。 「いい?分かってるんだからね。最近ハルが俺の部下とかに色々聞いて回ってるでしょ」 「え?いやですねー、ツナさんが初めての定例会議でかんじゃって、俺もう嫌だ・・・って部屋の隅で体育座りしてたことなんて聞いてませんよ」 「誰から聞いたんだよ!・・・いや、そうでもなくてさ・・・」 ゆっくりと。 沢田綱吉の顔から、ボンゴレ十代目の顔へと綱吉の表情が変わっていく。 「この抗争のこと、聞いてまわってるんでしょ・・・?それに、一樹のことも・・・」 一樹。 その名前に一層声の低さが増したことに、少しひっかかる。 「あのね、ハル。ハルが俺達のために何かしてくれようと思ってくれてるのは嬉しいよ・・・でも、これは本当に危険なんだ」 わかるだろ?と綱吉が言う。 それにハルは頷くことはできなくて、そっと俯いた。 「高校の時の比じゃないんだ」 あの時直接的な死を目の当たりすることは一度だって無かった。 リボーンや綱吉が巧妙に隠していたのかもしれない。 けれど、今回は隠しきれるか・・・いや、隠すことなど無理なのだ。 「ハル達に絶対に危害はくわえさせないから・・・俺が護るから・・・だから、危ないことはもうしないで」 ね?と首を傾げる綱吉に頷けなかった。 納得なんてできなかった。 それでも、悲しそうに眉を寄せる綱吉に頷く以外の行動なんてできなくて。 「わかり、ました・・・でも、ひとつだけ・・・教えてほしいことがあるんです」 「・・・何?」 ほっと安心したように息を吐いて、それから訝しげに眉を寄せた。 少しためらって、それから思い切ったように口を開いた。 「一樹・オークウッド・新崎さんについて」 「っ、」 じっと目を見つめて見上げてくるハルの視線に思わず息を呑んだ。 「・・・どう、して」 「さっき言ったじゃないですか・・・もう危ないことはしません、その代わりに、教えてほしいんです」 その人のことを。 まっすぐにじっと見上げたままそう言い切るハルに、綱吉は深くため息を吐いた。 昔から、この視線だけには勝てる気がしない。 じっと見つめられて、最後には仕方がないなと話しだしてしまう。 「・・・わかった。少し、だけだよ?」 「はい」 そう頷くハルに困ったなと思いながら、さっきからそっと握っていたチップをハルに見えるように広げた。 血に濡れて、時間がたって真っ黒に染まった小さなチップ。 「一樹は、日本への本部移転決行1週間前に敵に誘拐されて自殺したんだ」 |