この選択が正しいのかどうかは分からない。 もしかしたらもっと別のものを聞くべきだったのかもしれない。 でも。 きっと無駄なんかじゃないと、そう思う。 「自殺、ですか?」 思わず眉を寄せてしまったハルに苦笑しながら、綱吉はうんと頷いた。 哀しげに目を伏せて、それから少しだけ俯いて。 「日本への本部移転作戦のメンバーは、幹部を除いて全員チップをつけてる・・・俺は、反対したんだけど・・・忠誠の証だからって・・・」 先ほどから手の中で手持無沙汰に、けれど大事に触れているそれは、一樹・オークウッド・新崎のチップ。 鎖骨のくぼみに埋めるようにつけられていたチップが、居場所と死を伝えてくれた。 「情報を、聞きだそうとしたのかもしれない。車に引きずりこまれて、随分と暴れたけど逃げることができなくて・・・」 言い淀んだその先は、何となくわかる。 自分の銃か、相手の銃を奪ったのかは知らないけれど、きっと情報を漏らすまいと死を選択したのだ。 思わず目を瞑って耳を塞ぎそうになったけれど、ハルは必死で堪えた。 ここで逃げたら、もう無理だ。 「酷い有様だった・・・情報が取れなかったことに苛立ったのか、頭の形が残らないほどに銃で撃たれてて・・・」 ゾ、っと背筋に悪寒が走る。 「雨で、頭の中も血も、全部流れてた・・・自分で撃ち抜いた心臓と、撃ち抜かれた頭の間にあったチップは欠けることもなく、残ってた・・・」 ゆっくりと、ハルに見せるようにチップを机の上に置いた。 真っ黒に染まったチップ。 綱吉が日本に行くといった言葉に、綱吉に、付いていこうと忠誠を立てた証。 「俺が・・・日本に行くなんて言わなかったら・・・こんなことにはっ・・・!」 「つな、さん・・・」 ぎゅうっと、机の上のチップにそっと手の平を押さえつけるように握って唇を噛んで額を押さえる綱吉をそっと抱きしめた。 その体は、多少戻ってきたとはいえまだ細くて。 骨が若干浮いている背中を宥めるようにそっと撫でた。 「もう、嫌なんだ・・・!誰かが死ぬのを見るのも、傷つくのを見るのもっ・・・!」 ぎゅっと抱きしめ返されて、その力は少し強くて痛い。 「ツナ、さん」 中学生の時からそうだった。 誰よりも誰かが傷つくのが嫌いで、誰であろうと傷つくのは嫌で。 傷つけることだって大嫌いで、暴力は嫌いで。 でも、戦うしかなくって。 一番、きっと傷ついてきた。 「帰り、たかったんだ・・・っ」 震える声でハルの肩に額を押しつけたまま綱吉が呟く。 「・・・帰りたかった・・・」 |