抱きしめたまま、抱きしめられたまま。
ぐったりとハルに体を預けるように眠ってしまった綱吉を見て、ハルは泣きそうに眉を寄せた。

その体重は、増えたといえどハルですら支えられるほどに軽くて。
ぎゅうっと眠る綱吉を強く抱きしめて溢れそうになった涙をぐっと堪えた。

途端、


「おい、つ・・・なんつーうらやましい状況だ・・・」


定期健診なのか、ノックすらすることなく扉を開けたのは医師であるシャマルだった。
シャマルはハルの胸の中に倒れこんでいる綱吉を見ると、呆れたように眉を寄せる。

「は、はひ・・・シャマルさん」

なんだか少し恥ずかしくなって、思わずシャマルの名前を呼んだ。
というか、流石に支えられるとはいえ、ハルの力でずっと支えていられるわけもない。
ずるずるとだんだん綱吉が下がってきているのを感じて、助けを求めるようにシャマルを見る。

「おー、分かってる分かってる」
そう言うと近づいてきたシャマルががしっと綱吉を抱えた。


「・・・ツナさん、眠れてないんですか?」

夕方に差し掛かるとはいえ、まだ夕食前だというのに、綱吉は眠ってしまった。
先ほどの会話で疲れて眠るほどに泣いたというわけでもないのに。

「・・・精神的な、負荷が強くかかった時に自己防衛の為に寝るみたいだな」
「眠って、現実に触れないようにするってことですか?」

ベットに眠る綱吉を見る。
テキパキと脈拍を取ったり体温を図るシャマルを見ながら眉を寄せた。


「ああ・・・。イタリアでもよく寝てたな。おかげで超直感も役立たずでまぁ・・・どんだけ、ボンゴレがブラッドオブボンゴレに依存してきたか、思い知ったな・・・」

最後に柔らかな茶色の髪をくしゃりと撫でて、カルテにさらさらと何かを書きこんだ。
ハルはそんなシャマルと眠る綱吉の姿に何も言えなくて、ただずっと黙っていた。

今回の事件は、綱吉にとって凄く大きな心の負担になっている。
この抗争について調べるのを、やめた方がいいのかもしれない。

「・・・でも、」

聞こえないようにこっそりと呟いた。
止める、なんてして、もしこの抗争が解決して。

それで、綱吉が元気になったら・・・。

「もう、さよならは嫌です・・・」

例え綱吉が日本にい続けることになっても、こんな風に頻繁に会うことなんてもうきっと出来ない。
ハルたちのことを考えて、綱吉が会おうとしない。


でも、もしこの抗争を調べて。

ハルがマフィアで生きるしかないほどに深いりしたら。

そうしたら、一緒に、



「じゃ、俺は戻るから、起きたら安静にしとけって言っといてくれ」
「は、はいっ!わ、わかりました」
じゃあ行くなと入口に向かって歩いて行くシャマルを見送って、ハルは短く息を吐いた。

「もう、さよならは嫌なんです」
だから、許さなくてもいい。





こんな私を



( 自分の為ばっかりで貴方を傷つけてばかりな私を )