「さぁ、黙ってないで相手がどこの人だったのかを吐きなさい!」


ビシっと指さしても沈黙し続けるその人に、はぁとハルは息を吐いた。

「・・・なんて、お墓がしゃべったら怖いことこの上ないですよね・・・」

ふぅとまたため息を吐いて見つめるのは、屋内庭園の奥にある彼の墓だ。
一樹・オークウッド・新崎。
日本に関係する人たちばかりを集めたこの作戦の中で、一番最初の犠牲者になった人。


「うー・・・衝動でここに来たのはいいものの、何も浮かびません・・・」

死人に口なしとは、本当によく言ったものだと思う。
とはいえ、解剖なんてことはもう綱吉達はしているだろうし。

毎日新しい花が飾られている墓前に、そっと白い花を少し添えた。
きっと大きなキーパーソンだと思う。
だから交換条件として綱吉から聞き出したのに。

「・・・っ、あー!!もうっ!!!何にも浮かばないですぅ!!!」

うがーと思わず叫ぶ。
迷惑だと思われていても、死人に口なしなので文句は言われない。
と、開き直ってハルはじっと眼の前の墓を見た。


「・・・いい加減、白状してくださいよ・・・何があったっていうんですか」
つんつん、と人差し指で墓を突くけれど、当然答えなんて返ってこない。
「・・・見てるんでしょう?空の上から。誰が情報を流したっていうんですか・・・?誰が、敵なんですか?」
つんつんとつつく指を力なく落として、思わず蹲った。

答えがほしい、答えを聞いて綱吉の傍にいたい。


「もう嫌なんです」

高校卒業のときに傍に行きたくて傍にいたくて。
でも綱吉は絶対に許してくれなかった。

「もっと、頑張ってツナさんを説得すればよかったって思ったんです」

結局それに逆らえなくて、普通に大学に入学して、時間を過ごして。

「本当に行きたいなら、イタリアに押し掛ければよかったんですよ」

3年間、ずっと考えた。

もっといろんな方法があったんじゃないかって。
まだ出来ることがあったんじゃないかって。
それなのに諦めて、傍にいたかったなんてさめざめと泣いて。

「・・・でも、怖かったんです・・・ツナさんがハルのこと迷惑な子だと思ってたらどうしようかと思って・・・無理に言いすぎて、ツナさんに嫌われたら・・・」

綱吉に拒絶されるのが怖かった。
迷惑だと切り捨てられるのが怖かった。
それでさめざめと泣くことを選んでしまった。


「だって、当然じゃないですか・・・ハルはツナさんの心なんて分かんないですし」

他人の心なんて理解できない。

「でも、一人になって気づいたんです」

相手の気持ちを考える前に、自分で納得できるまで走ればよかったって。


「・・・それにしても、殺風景というか、寂しいですよね、ここ」

いや、そりゃ墓は少なければ少ない方がいいのは当然ですけど。
たった一つしかない墓が、くっきりとどこか別世界のように浮いていて。


たった、一つしかない墓、が。


「―――――――あっ!」


パチン、とピースのはまる音がした。





まるで音をたてるように



( 持っていたピースがどんどんと組み上がっていく音がした )