ぱっと顔をあげて走り出そうとしたセオのスーツの端を捕まえて、べしゃっと崩れ落ちたセオを見ながら、ハルは膝を折った。 「何してるんですか、セオさん」 「・・・ほとんどがハルのせいだと思うけどな・・・っ!って、そういう場合じゃない!丁度今会議中なんだから、そのことを言いに行かなぶぁあ!!」 ああ、ヒールのついた靴で良かったです、とハルは内心でほほ笑んだ。 地面にひれ伏したセオの頬をぐりぐりと踏みつけながら、きっと第三者から見れば何のSMと思うだろうと思う。 そのまま気付かれないうちに背を踏みつけて、立ち上がるなと意思表示する。 「何言ってるんですか。駄目ですよ」 「ぅ、はひほひっへ・・・」 「ハルが、ハルが、ハールーが、頑張って聞きだして集めた情報ですよ?ハルが、ハルが、ハールーが、気づいた情報ですよ?」 同じ調子で、しっかりと自分が発見したことなのだと主張する。 それでなければ、何のためにこれを借りたのか意味がない。 頬からヒールをおろすと、セオ自由になった口を少し感覚を戻すように動かしてから、口を開いた。 「まさか・・・、っ十代目が何のために日本に来たのか、」 「わかってますよ」 頬の横でぎゅっと自分の髪を掴んで、ハルは瞳を閉じた。 「ツナさんが日本に平穏を、日常を求めていたことくらい知ってます。そんなこと、わかってます」 じゃあ、と見上げてくるセオに、ハルは少しだけ泣きそうな顔で呟いた。 そんなハルの表情に、思わずセオの言葉が止まる。 「言ったじゃ、無いですか・・・ハルは、ハルのしたいことしかしませんって」 それが今まで綱吉のためになっていただけで。 それが今回、綱吉のためになるかどうかわからないだけで。 「ハルの邪魔は、例えツナさんであろうと許しはしないんです」 綱吉が好きだから、綱吉の気持ちの安寧する為に動いてきた。 でも、違う。 綱吉が好きだから、たとえ綱吉を傷つけても譲れないものがある。 だって、ハルは沢田綱吉が好きな、一人の人間ですから。 「・・・わかった。ただ、流石に戦闘に出ることは許してくれないと思うぞ」 「ふふ、ハルにそんな力はありませんから。努力はしますけど、無謀はしません」 にこっと笑みを返すハルにセオは深くため息を吐いた。 そういえば昔こんな格言があったような気がする。 人の恋路を邪魔するやつは、馬に蹴られて豆腐の角に頭をぶつけて死んでしまえ、と。 ・・・いや、何か混じった気がする・・・。 「あ、そういえばセオさんに最後の質問があるんですけど」 「な、何・・・?」 漸く背からもピンヒールをどけられて、セオは恐る恐る立ち上がった。 ちなみに、かなりピンヒールは痛かった。 「あのですね、一応確認といいますか、下手に二次災害を起こしてもいけませんし」 「・・・何をする気だ・・・」 げんなり、とセオは額に手を当てた。 ああでもきっと、もう何が来ても驚きはしない。 「会議室って、防弾加工してありますか?」 そういえば先ほど奪われたばかりの拳銃は、ハルの胸の谷間に挟まれた状態で顔をのぞかせていた。 |