「さて、ランボちゃん。前カラオケした時に言ってましたよね。一人で・・・自分の部隊に任務を任されるようになったんですよって」 「え・・・!?え、えう・・・そ、そうです、けど・・・」 ざっとランボに視線が集中して、ランボは肩身狭そうにきょろきょろと視線をさまよわせた。 「でもこうも言ってましたよね?守護者全員が任務に出たことがあるって・・・そう、何か教えてもらえなかったけれど、実験をしていたファミリーのところへ」 「い、言いました・・・けど・・・」 自分が何かやらかしたのかと不安に汗を流すランボを安心させるように、優しく微笑んだ。 それから、綱吉に視線を向けた。 「何の実験をしていました?」 「え・・・?」 綱吉に向けて言ったのだと気づいて、綱吉はためらうように視線をさまよわせた。 ランボを見て、骸を見て、それからハルにもう一度視線が帰ってきたときにあわせて微笑んだ。 それに、躊躇いながら逃げる場がないことを知った綱吉が口を開く。 「・・・体の一部から、情報を取りだす実験・・・だった・・・。主に、頭部・・・」 少し頬の色が回復していた綱吉の頬から、色がざぁっと音を立てるように抜けていく。 それからはっとハルの持つ銃の先にある場所を見る。 綱吉の視線に、ハルはゆっくりと頷いた。 「ツナさんたちが選んだ人です・・・ツナさんが日本に行く情報なんて、紙だろうとメモリだろうと、持ち歩いたりするわけがありません。信じていて大切な仲間だから、日本に連れて来てでも墓を作ったんですよね?」 死が日常にあっただろうそんな世界で、あえてイタリアではなく日本で墓を作るほどに思い入れのあった人物なのだろうから。 きっと、そんなことはしない。 「でも、どうしても持ち歩いてしまう情報源があるんです・・・チップは残っていたけれど、それはなくなっていましたよね」 あの現場で、きっと唯一なくなっただろう物。 腹いせと言わんばかりに頭は撃ち抜かれていて、中身は雨で流されたらしい。 「頭なら、殺さないわけにはいかないですよね」 けれど頭部だけを持ち帰ってはあまりにも不自然だ。 持ち去られた頭部から、その実験のことを思い出されては自分たちのことがバレてしまう。 「中身だけ持ち去って、あとは誤魔化すために銃を撃ち抜けば・・・雨が降ったならなおさら、分かりにくいですよね」 苛立ちに誤魔化してしまえば、一樹の死という事実があれば、先入観で人は強くだまされる。 ブラッド・オブ・ボンゴレがないのならば、尚更。 「実験は、あそこで行われただけじゃない・・・俺は、気付けなかった・・・」 もしかしたら、その時にすでに神経が大分弱っていたのかもしれない。 超直感さえあれば気づけていたのかもしれないと口を噛む綱吉をハルは見つめていた。 綱吉が、眠りに落ちそうになる様子は見当たらなかった。 「どれくらいの情報が得られるものなのか、ハルはわかりません。けれど、ツナさんの精神を追い詰めるという選択を選んだのは、ツナさんの日本に行く理由が、神経衰弱によるものだと分かったからでしょう。・・・たくさんの、ファミリーの人を逃してしまったそうですね」 「・・・うん・・・。もしかしたら、逃がすように何か部下に施していたのかもしれない・・・逃げるとは思えないほど、ボスに心酔していたファミリーだったから・・・」 綱吉がうつむいたまま確認するように言う。 ああ、そういえば、日本に行く前にイタリアで日本でハルたちを狙おうとしたマフィアの人間は、爆破して死んだ。 ボスに陶酔する言葉を言ってから。 頭部に植えられた爆弾で。 「イタリアの方は襲撃されてないって山本さんが言いましたよね?」 「あ、ああ・・・」 「ボンゴレが目的ならば、複数のファミリーならば、たとえ警備が万全とはいえ襲撃が無い、なんておかしい話じゃないですか?」 「・・・だから、ザンザス・・・」 何か思い至る会話があったらしい。 既に銃をおろしているハルに気が付く人は、誰もいなかった。 |