意気揚揚と皆が準備に繰り出してしまったため、二人っきりになった部屋で綱吉はずっとハルを抱きしめていた。 それから、口を開いた。 「俺はさ、京子ちゃんに弱いところとか見せたくなかった」 「・・・ツナ、さん?」 腕の中できょとんと見上げてくるハルに小さく微笑んで、続けた。 「他のみんなにもさ、リボーンがドン・ボンゴレらしくーとか言うし、部下の理想壊しちゃいけないっていうし、弱いところなんて見せられなかった」 ポスンとハルの肩に顔をうずめて、目を閉じる。 短くなったハルの髪が、頬に少しだけ刺さった。 「日本にさ、行きたいって思ったのはハルがいたからだって言ったら・・・信じる?」 「え・・・?」 「俺ハルには間抜けなところばっかり見られてるし、ハルには怒鳴ってばっかだし、失敗ばっか見られてるし」 顔を動かして、擦りよるように抱きしめる。 「シャマルが俺の容体について話してるときも、止めなくちゃって思ってたけど、ハルならいいかって思った」 ハルなら同情しない。 ハルなら俺の弱いところ一杯知ってる。 ハルなら。 「ハルなら、きっと俺の弱いところ全部受け止めて、支えてくれるんじゃないかって思ってた」 「ツナさん・・・」 「最初ここに来た時、ハルが意識を失ってて・・・俺甘えてるなって思って言い出せなかった・・・」 黙ってることは出来たくせにね、と綱吉が小さく笑う。 それから、さらに強くハルを抱きしめた。 「・・・怖かった・・・。ボンゴレ十世に俺が押しつぶされていくような気がして、怖くて、怖くて、」 震える体を、思わず強く抱き返した。 そんなハルに、さらに綱吉がすり寄るように力を込めた。 「沢田綱吉でいれるのはハルの前だけだった」 みえはって、京子ちゃんの前では格好よくあろうなんて思ってた癖がついてて。 本当をさらけ出すことができなくて、結局京子ちゃんの前では強いフリをしていた。 「本当は、マフィアなんてできるほど強くなくって、弱くってドジで馬鹿なのが俺だって、言ってほしかった・・・」 だから一番依存されている部分の超直感を失ったのかもしれない。 そんな綱吉に、ハルはそっと頭を綱吉の頭にくっつけて、微笑んだ。 「ハルは、ツナさんが好きです」 「・・・うん」 「泳げなかったり、お化け屋敷が怖かったり、勉強できなくて31日まで宿題溜めちゃったり、恥ずかしくて怒鳴っちゃうシャイなツナさんが、大好きです」 弱い部分も、全部。 だって、すべてが揃って沢田綱吉だから。 「ボンゴレ十世として頑張るツナさんも大好きです。京子ちゃんの前で格好つけてるツナさんも大好きです。沢田綱吉なツナさんが、大好きなんです」 「・・・うんっ、」 ぐずっと小さく音がして、それからゆっくりと綱吉の顔が離れた。 その顔は、綱吉が日本に帰ってきて初めて見るほどに、赤くなっていた。 「ハル、俺も、ハルが・・・好きだよ」 「はい」 ゆっくりと重なる唇に、瞳を閉じた。 |