「まず毒サソリは無理でしょうね。彼女がボンゴレの死神の現在たった一人の愛人であることは有名ですから」 骸が頭の中の候補からビアンキの名前を消した。 ある日突然リボーンは愛人と手を切り、唯一傍にいる愛人であるビアンキも、今では相棒の意味合いが強い。 リボーンが確か、愛人と手を切り始めたのは、先に綱吉だけがイタリアに渡った後だったはずだ。 骸の言葉を聞きながら、綱吉はハルが帰ってくる予定の扉を見ながら考える。 「幹部以外の奴らも駄目だな。勘違いされても面倒だしな」 と、今度はリボーンの頭の中で幹部以外の女マフィアの名前が一気に消えていく。 その言葉に、ふと綱吉が思いつく。 「クロームは?」 幹部だし可愛いし、勘違いすることなんてありえない。 ナイス人選、と思った綱吉に、骸とリボーンが同時に口を開いた。 「「却下」」 「ええっ!何で!?」 ピッタリとそろった声に、思わず綱吉はたじろいだ。 きょとんと首を傾げる綱吉に、リボーンと骸が溜息を吐いた。 「“片目”は相応しくないと言われてしまうでしょうね」 「あ・・・そういえば、クロームって片方目がなかったんだっけ・・・」 今の今まで、一般的に失陥と認識されてしまうことをすっかりと忘れていたと言う綱吉に、骸が苦笑する。 「それは君の美点だとは思いますがね・・・あの子も気にしないと言えば気にしないんでしょうけど・・・」 「結構クロームってその辺鈍感だもんな」 鈍感って、お前に一番言われたくない言葉だろうな、と思いながらリボーンはもう一つの理由を口にした。 「あと、六道骸のお気に入りとしても有名だぞ」 じっとリボーンが骸を見ながら言って、そしてその言葉につられて綱吉も骸を見た。 「くふ、大・成・功☆ですね」 「意図的かい!」 ったく、ああもう、本当にこの男は何を考えているかがわからない。 つい先日も少年を拾ったと言って、うちの子自慢をしていたのだが、それが本気なのか演技なのか。 もう考えるの面倒くさい・・・。 ちょっと痛む頭を押さえながら、そういえばと入口を見る。 「なぁ、リボーン。掃除道具ってどこにあったっけ」 「あ?すぐそこ曲がったところの部屋だぞ?」 どうした?と言うリボーンに、綱吉がちらりと落ちて砕けた皿を見る。 いや、別に皿が割れておちているくらい、普段の被害に比べればなんてことはないのだけれど。 「いや、それにしてはハル遅すぎないかなぁと思って」 「・・・・・・」 まさか流石にボンゴレ本部の中で綱吉の秘書であるハルに何かをしようなんて馬鹿はいないと思うが。 今にも、ちょっと行ってくるよ、と扉を出そうな雰囲気だ。 「・・・ああ、そうですね、それがありましたか」 「適材だな」 うんうん、と頷き合っている骸とリボーンを怪訝そうな瞳で見て、綱吉は首を傾げた。 途端、ガチャリと音がして扉が開いた。 「はひー、すみません!さっき凪ちゃんとずっとお話しちゃって!」 箒とチリトリと新聞紙を持ったハルが、ごめんなさいと謝りながら部屋に入ってくる。 そんなハルの肩を、骸がそっと叩いた。 「というわけで、お願いしますね」 「・・・はひ?」 |