「っ、すみません!俺が、俺の、せいでっ!!」 ああちくしょう。俺が先に気付けていれば、十代目より早く気付いていれば、逆の場所だったならば。 それは結局言い訳にしかならなくて、俺はただ頭を下げているだけしか出来なかった。 「そんなに酷い怪我じゃねぇ。・・・気にすんな、獄寺」 そうリボーンさんがおっしゃたけど、どんなに軽かろうと傷は傷だ。 護れない俺の無力さが、十代目に傷を負わせた。 「ツナは、大丈夫だって。な?獄寺」 どんなに小さくとも、どんなにかすかであろうと、その傷は俺が護れなかったからついた傷だ。 リボーンさんと山本が去っていき、そうして最後に出てきたのは、ハルだった。 「獄寺さん」 「・・・」 「ツナさんは大丈夫です。だから、獄寺さんが気をや――」 「お前に」 闇を知らないお前に、この世界を知らないお前に、マフィアのことなんて知らないお前に、 「お前に何が分かんだよっ!!」 その返事は返ってこなかった。 ただそこにはまっすぐに俺を見てくるハルの姿があるだけで、それが一層俺の口を饒舌にさせた。 「マフィアのことなんて、ひとつもわかっちゃいねえじゃねぇか!十代目がどんな仕事してんのかなんて表程度しかわかってねぇくせに!この世界の闇の部分なんてしらねぇだろうがっ!!」 八つ当たりだ。頭では分かっていた。 ここでハルに今までの不満をぶつけたからといって何になる・・・何にもならない。 けど、止まらなかった。 「銃だって大してあたるわけでもねぇ、体術が出来るわけでもねぇ、頭が特別良いわけでもねぇ・・・!ボンゴレの仕事なんてさしてできねぇくせに!」 どうしてお前が十代目の横に平然と立てる。 何にもできねぇくせに。 「マフィアって何かわかってんのかよっ!裏社会なんだよっ!人を殺すことなんてざらだ。俺だって殺したっ!」 十代目のために。 全てはただ、十代目のためだけに。 「お前に何が分かるんだよっ!お前に何が出来るんだよっ!!―――何にもできねぇくせにっ!!」 十代目に聞こえるとか、そんなことは頭の中から消えていた。 そうして、肩で息をしていたときに。 「それで、獄寺さんの意見は終わりですか?」 「あ・・・?」 普段ならここで言い返すか憤慨した表情をしているだろうハルは、ただ静かに俺を見ていた。 その静かさが自然すぎて不気味なほどに。 「それで、獄寺さんの意見は終わりですか?」 同じ言葉をもう一度、こんどはゆっくりと言うハルにさらに苛立ちが募る。 「ああ、そうだよっ!」 自分の苛立ちで精一杯だった。 だから、気付かなかった。 「ふっざけんじゃないですよーーーーー!!!!!」 ハルの額に怒りマークが浮かんでいたことに。 |