ピリっと張り詰めた空気。

時計の音すら響かない中で、ふと糸が緩んだ。


「ご、獄寺さんにはわかんないんですよぉおおおお!!!」


・・・おい。

今の今でそれはねぇだろ・・・と思ったけどとりあえず言わないで置いてやる。
第一、こいつがそういう小難しいことを言って耐えられるはずもなかったんだった・・・。
そういう難しいことを言い続けなくていい。
こいつは、ただ本能で動いてればいいんだよ。

全ては、十代目のために。



「だー!ほら、泣くんじゃねぇよ・・・おら」
ポケットに入れてあったハンカチを渡してやった。つか、汚ぇな、おい。

「ず、ずびばぜ・・・っ!」
「鼻水付けんなよ」
「付けませんよぉっ!!」

嗚咽を漏らしながらまだ泣き続ける。
短くなった髪の天辺に、手を乗せた。・・・別に何を思ってってわけじゃないですからね!十代目!!

すると、ハルの嗚咽が小さくなる。

「・・・悪い」
「何のことですか?・・・獄寺さんがごめんなんて言うと気持ち悪いです」
「ってめっ!!このっ!!」
そのまま力を入れて、小さい頭をギリギリと掴んだ。

「はひぃっ!!い、痛いですよっ!」
「痛くしてんだよっ!!」

わざと話題を逸らしたハルに乗るように話題を逸らす。
畜生、だからそういう小難しいことしてんじゃねぇよ。

てめーは単純馬鹿なんだから口で言え、口で。


「第一生意気なんだよ。十代目の隣で戦うのは俺だっつーの。てめーみたいな銃も弱い馬鹿女に十代目の隣なんて危なくて任せられるか」

謝るくらいなら、ってくらい言えっつーの。
この馬鹿女。


「むっ!そんなこと言ったら獄寺さんみたいにデンジャラスな人も安心できないですよっ!ダイナマイトとかツナさんが被爆したらどうするんですか!」
「は?んなの十代目には一切当たらないようにしてるに決まってんじゃねぇかよ!万が一十代目に当たることがあっても俺が護るからいいんだっつーの!それよりも、もしてめーを十代目の隣に置いて、十代目が被弾したらどうするんだっつーの」

「ひ、酷いですっ!どーせハルは銃がヘタクソですよっ!」


5割ですし!とハルが付け加える。
つか、5割ってどうなんだよ、お前。



「てめーは十代目を待ってりゃいいんだよ、馬鹿女。弱いくせに戦うとかアホなこと考えんじゃねぇよ、馬鹿」


「獄寺さんは馬鹿馬鹿言い過ぎですよっ!せーぜーツナさんを護ってくださいよっ!」



「お前に言われるまでもねぇっつーの!」
十代目を護るのは俺だからな。


にっと口角を吊り上げると、ハルも笑う。
こういうのを、日本では。


適材適所って言うんだよ、馬鹿女。





彼女と僕は違う場所で戦い続ける



( 僕は彼の隣の戦場で敵と、彼女は彼の心の中の闇と )