その気持ちに、まだ名前は付けていない。



「今日はこれで終いだな」
「はひ!ありがとうございました!」

カチャリと銃の安全装置を付けてふりかえるハルにひとつ頷いた。
銃の練習を始めてから1ヶ月、的にはとりあえず当たるようになった。


「今日はちったぁ上手くなったじゃねぇか」
「はひ!そうなんです!昨日雲雀さんが練習に付き合ってくれたんですよ!」

・・・へぇ、雲雀が、な。
大分あいつもハルに絆されてるらしい。

となると、骸が陥没するのも時間の問題っつーところか。



「はひぃ・・・もうこんな時間です・・・」

ついハルの上達を見るのに集中していたせいか、もう時間は八時を回っていた。
普段なら一人で帰らせるところだが(つっても、マフィアの護衛は付けさえるが)、さすがに俺が送る時間だな。


「ハル、送ってくぞ」
「・・・はひっ!?だ、ダメですよ!そんなのリボーンちゃんがデンジャーじゃないですかっ!」

「は?」

ちょっと待て。
・・・ハル、俺の実力は散々見せてやっただろうが。

それなのに未だ俺を子ども扱いか。

(何だか、酷くムカついた)



「俺を心配するより自分を心配しやがれ。俺は別にどうこうなりはしねぇぞ」

雲雀と骸を同時に抑えてるところだって見てるだろうが。


「ダメです!」

けれど、その主張は一切通らなかった。


「夜道ですよっ!?リボーンちゃんはまだ5歳なんですから!攫われちゃったらどうするんですかっ!」
ビシっとハルの人差し指が俺を指す。
「ハルはリボーンちゃんに送ってもらったら、その後ずーっと心配して起きてるんですからね!で、明日会えるまでずーっと心配してるんですからねっ!」

それは脅しのつもりか?
ハルが心配してようと俺には損害は無いはずなのに、仕方が無いという思いが膨らんでくる。

それが、意外に不愉快ではなかった。


「・・・今日、邪魔するぞ」
「!――はい!」

喜色満面の笑みを浮かべるハルにひとつ溜息をついた。
一応俺も男なんだけどな。

けれど、ハルの子ども扱いはそんなに不愉快ではなかった。
多分、ハルの子ども扱いは対等の上での庇護だからだろうか。

子どもの特権、ってのを思いきり行使できる相手っつーことでもあるわけだしな。


「ハル、今日は一緒に風呂に入ってもいいか?」
「はひ!楽しみですねぇ!」

とりあえずハルのことも大事に思い始めてるあのダメツナに、風呂の感想をきっちりと伝えておこう。


・・・ツナ、か。


(少しだけ、あの時ダメツナに渡すんじゃなかったと思ってしまった)





彼女は変わらない



( 京子ですら俺を子ども扱いするのを躊躇ってるっつーのに )