様子がおかしいと思ったのは、小さくて大きなきっかけからでした。


出逢った頃は生返事ばっかりだったのに、中学3年生のころにはちゃんと聞いてくれるようになりましたよね。ハルはちゃんと知ってたんですよ。
同じ高校に入って、同じクラスになって、昔みたいに声をかけても眉を寄せなくなりましたね。

ハルはツナさんばっかり見てたから、気付いてたんですよ。


ハルが声をかけたら笑ってくれて、話をちゃんと聞いてくれて。心の距離が近づいたんじゃないかって思ったんです。

でも、最近変な感じがするんです。



「必死っていうか、何と言うか・・・」
思わず小さな声で呟いた。


「どうしたの?ハルちゃん」
「はひっ!?い、いいえ、何でもないんですよ!」

さ、最低です・・・。お話中に考え事してしまうなんて。

京子ちゃんはツナさんの大好きな人。とてもキュートで優しくて、護ってあげたいって思うような子で。
失恋だって分かってるんです。だけど、ハルはツナさんが好きだなぁって思うとそれしかなくて、結局諦められなくなっちゃったんです。


ずっと見てるから、最近ツナさんが変なんじゃないかって思ったんです。話を聞いてくれるのは変わらないんですけど、必死に聞いているというかなんと言うか。

一つですら聞き逃さないみたいに。



また大きな戦いがあるんじゃないかって思ったら恐くなりました。
でも、獄寺さんは嬉しそうで、山本さんも寂しそうだけど嬉しそうで。


何だか、変な感じがするんです。


「・・・京子ちゃん。ツナさんなんだか最近変じゃないですか?」
杞憂であってほしいんですけど。

「え?そうかなぁ・・・。いつも通りだとおもうよ?」
京子ちゃんが首を傾げて言った。
「はひ・・・。そうです、よね」

ハルは直感で動くくせに考えすぎるってお父さんに言われたばっかりなのに。
ツナさんはただ高校生活をエンジョイしてるだけかもしれませんし。だって、あと5ヶ月ですもんね。

でも、




「ツナさん。何かハルに隠し事してませんか?」
ツナさんと、獄寺さんと、山本さんと、京子ちゃんで帰るときに、ついつい言ってしまいました。

「――え?」

ツナさんの、表情が。


「そんなわけないだろ?何でそう思ったんだよ」

いつも煩い獄寺さんが黙ってしまって、山本さんが笑ってなくて・・・ツナさんの顔が歪んだ。


皆さん、隠しごと下手ですね。
ハルはツナさんがあんまりにも京子ちゃんばっかり見るから、嘘上手くなったんですよ。

ツナさんの向こうに、不思議そうな顔をしている京子ちゃんが見えた。

「いーえ!目の下に隈があります!また徹夜でゲームしてたんですね!?」
あれほどダメって言ったじゃないですか!腰に手を当てて怒った顔をすると、ツナさんたちの顔が和らいだ。

本当に、嘘下手なんですから。
最近ツナさんがゲームをしていないって知ってるんですよ(一体、何をしてるんでしょうね)。




「ハル」
声がかかったのは丁度ツナさん達と別れてちょっとした後で。


「・・・リボーンちゃん・・・」


ハルの腰くらいの高さにあるリボーンちゃんの口がニヤリと笑った。





ある日、貴方の



( 目が優しくなった、言葉が慎重になった、顔が悲しみを孕んだ )