超直感と二人の気配を頼りに突き進んで、壁を吹き飛ばした瞬間。

最初に目に入ったハルに、綱吉は目を見開いた。



「ツナさん!」

ハルが上半身を持ち上げて、目を輝かせていて。


その左頬は酷く真っ赤で痛々しいほどに腫れあがっていた。




「リボーン、二人を頼む」
「・・・ああ」
二人の方に動いたリボーンを見て、綱吉は戦闘態勢に入っている敵を睨んだ。


「ハル、それしたの・・・誰?」

敵を睨んだままの綱吉に、漸く頬のことだと思い至って、ちらりと敵の一人に視線を移した。



「京子、先に行ってろ」

「え・・・で、でも」
戸惑ったように綱吉を見る京子に、リボーンはふと視線を和らげて。

「了平が心配してるぞ」


「お兄・・・ちゃん?」

了平。その名前に今まであった緊張が緩んで笑顔が戻った。
安心したように走っていく京子を見送って、リボーンはハルを振り返る。


もうすでに、綱吉の戦いが始まっていて。

次々と敵の倒れていくさまをじっと見つめていた。


「ハル・・・」

ゆっくりとハルが首を振った。
目の前では綱吉が戦っていて。

「ハル」
「もうちょっと、ここにいさせてください」
その声は絞り出したような声で。

ハルはただ唇を噛み締めていた。


敵は次々と倒れていき、ハルはもとよりリボーンですら介入できない。
それほどまでに強く怒りを感じて。

「ツナ、さん・・・」


ゾクリと体が震えた。あんな目を、はじめてみた。

けれど、ふと攻撃が偏っているのに気付いて、ハルは目を見開いた。



「絶対に、許さない」



低い声に息を呑んだ。
その攻撃は、ハルを殴った男に向いていて。


(だめ、です!)


頭の中で警報が鳴り響いた。
隣でリボーンの呼ぶ声が聞こえたけれど、ハルには届かなかった。


ただ、見えるのは綱吉だけで。



ハルは、


「――――ツナさん!」


叫んだ。





磨かれる闇



( あなたがどんどん染まってしまう! )