「どいて・・・」

冷たい。
いつもの声と全然違って、ツナさんの声が凄く冷たい。

目の前にいるのはツナさんなのに、体が震えた。


「駄目です」

ゆっくりと腕を広げた。
時が止まったような気がした。

「そいつは、ハルを傷つけた」

「もう、気絶してます」


もういいんですよ、ツナさん。

「ハル、どいて」


・・・駄目、どいちゃ・・・だめ。
どいたら、ツナさんは。

「もう大丈夫です。こんなの平気です」

ツナさんが近づいてきて、そっとハルの左頬に触れた。
「こんなに腫れてるのに・・・平気なわけないだろっ」

ツナさん。ハルだって平気なんかじゃないんです。



「――お腹すきましたし、頬痛いですし、それもこれも全部貴方のせいですよ!」



京子ちゃんのツナさんへの思いも分かっちゃったじゃないですか!

全部全部、貴方のせいですよっ!




「・・・ハ、ハル・・・?」
「中々いい蹴りだぞ」

あー、すっきりした。


ちょっと吹っ飛んでるハルを殴った人と、口笛を吹いたリボーンちゃんと・・・目を丸くしてるツナさんを見た。

「これで、お相子です」
何だか色々とおまけもついたような気もしますけど。



「駄目ですよ、ツナさん」
平気になっちゃ、駄目なんです。


「殴られたら痛いんです。殴ったら痛いんです。・・・ツナさん、痛いの嫌いじゃないですか」


ハルが知ってるツナさんは、人を傷つけたりすることが嫌な人ですよ。
死ぬとか殺すとかもってのほかで、戦いなんて嫌いじゃないですか。


「もう、止めましょう?」

敵だって倒したし、ハルはちゃんとやり返してやりましたし。
おなかだってすきました。

「帰りましょ、ツナさん」


ツナさんの額から炎が消えて、目がいつもの目になって。
戦ってるツナさんの目も好きですけど、ハルはやっぱりいつもの優しいツナさんの目が好きです。

だから、ずっと大好きなんですから。



「ハル・・・」

戸惑ってるツナさんに手を差し出した。

「帰りましょう、ツナさん」





平気になんてなれない



( この頬の痛みも、貴方が人を傷つけることも )