もう日が傾きだしたオレンジ色の世界の中で、手を繋いで歩いた。
時々遠くの方で影が見える以外には人影もない道で、民家すらない川沿いを二人で歩いていた。

リボーンに悪いとは思いながらも全て後片付けを任せ(ハルが)、たった二人っきりで歩いた。


「ツナさん」
ハルが呟くように言った声に、綱吉は振り返らないまま首を傾げた。

「ん?」
繋がっている手はじわりと暖かい。

熱が、溶け合う。


「ツナさん、イタリアに行くんですね」


ゴクリと、息を呑む綱吉にハルは思わず苦笑した。
やっぱり嘘、下手ですね。


「――・・・うん」

少し時間が経って、それから綱吉は覚悟したように口を開いた。
手が少しだけ、震えた。

そんな綱吉の手をハルは強く握って。


「連れて行っては、くれないんですね」



ピタリと足が止まった。

綱吉の茶髪は温かいオレンジ色に染まっていて、その瞳もきっと。
二つの影は後ろに長くのびていた。

「・・・ごめん」

また歩き出した。
さっきよりもゆっくりになった綱吉の背中を見つめたまま、ついていく。



「どうしても、駄目なんですか?」
「・・・うん」

ダメですか?なんて聞くつもりはなかった。
これこそ本当にツナさんが、困っちゃうから。


「日本にはあんまり帰れなくなるんですよね」

あえなく、なっちゃうんですよね?

「うん、そう・・・なる」
「そう、ですか」


ハルの視線が沈んでいって、綱吉の足からのびる影を見つめた。
今はこんなにも近くにいるのに。



決めました。

一度大きく息を吸って、吐いて、深呼吸。ハルは顔を上げた。


「日本に、います」


またぎゅっと強く手を握った。

「京子ちゃんと一緒に、日本にいます」


綱吉がハルの手を強く握り返す。
「う、ん・・・」
声は震えていた。


ツナさん、ハル・・・決めました。
戦ってるツナさんを見て、ハルは決めたんです。



「日本に、いますから」


ツナさんがイタリアに行くときは泣かないで笑っていますから。


だって、ツナさん。

ハルは嘘が上手になったんですよ?





シトラス色の中で



( 切ないほどに、苦しいほどの、決意をした )