「・・・また来たの?」 呆れたような恭弥の声に、ハルは身体を震わせた。 同時にリボーンと骸の目もこちらを向いて、ハルの体は一層震えた。 恐い、けど。 「決めたんです」 骸が呆れたように溜息を吐いた。 「この前の時に分かったでしょう?君は逃げ出すことも、戦うことも出来なかった」 腕も、足も、震えていた。 「君は、弱い」 パチンと、何かが弾けた。 足も腕も振るえて膝は笑っていてかみ合わせた奥歯もガチガチと音を立ててはいたけれど。 「ハルは、弱いです」 最大の力で、三人を睨んだ。 「そんなの、ハルが一番良く分かってるんですよ!」 目の端に涙が浮かんだけれど、気にしてなんていられなかった。 ポカンとした二人とリボーンを真っ直ぐに見て、 「リボーンちゃんに腕相撲で勝てないですし、この間獄寺さんに数学勝てませんでしたし、そりゃもう弱いですよ!」 相手が恭弥や骸だということはすっかり頭から離れていた。 「・・・何か論点ずれてない?」 「いいんです!」 頭の中は真っ白で、何を口走っているのかすら分からなかった。 だけど、またハルは口を開いた。 「――あんなツナさん、嫌ですっ!」 ハルを傷つけた男を、気絶しても攻撃している綱吉を思い出した。 冷たい、声。 ぞっつするほど相手を憎む目で見ていたツナさんなんて! 制止のかからないのをいいことに、ハルはさらに勢いを増した。 「たしかにトンファーも槍もダイナマイトも銃も刀も使えませんけど・・・使いたく、ないですけど」 だからハルは弱いままですけど。 「だけど、ハルには出来ることがあります!」 じっとこちらを真っ直ぐに見てくる幼いけれど鋭い漆黒の瞳と向き合った。 未だに体中の震えは止まらない、けれど。 「雲雀さんにも骸さんにもリボーンちゃんにも皆にも出来ないことが、できます」 戦えないから――否、戦わないからできること。 強くないから――否、弱いからできること。 「ツナさんと、同じ場所にたって」 これすら否定されてしまったらどうしようと思った。 「殺すのは“当たり前”じゃないんだってこと」 君じゃなくても良いと否定されてしまったらどうしよう。 「傷つけられたら痛いんだってこと」 それなら、京子ちゃんだって良いんだって、言われてしまったら。 「倒すためじゃなくて、護るためだから戦うんだってこと」 今度こそ、反論なんてできなくなるだろうけど。 胸を、張った。 「教えてあげられるのは、ハルだけです」 |