唇を真っ青になるまで噛み締めているツナは、誰の目から見ても痛々しかった。

・・・ダメツナ。
久し振りに心の中で昔の愛称で呼んでみて、祈るように指を組む教え子を見ていた。


未だ手術中のランプは消えない。
シャマルが全力を尽くしてやってるんだから大丈夫だ、と思いたいのは自分だと気付いた。




飛び出した彼女に、誰もが呆然とした。

ツナは勿論のこと、俺ですら一瞬目を見開いた。
喪失を恐れているんだと、今更ながらの覚悟の弱さに気付いたような気すらした。

全く、どうしようもねぇな・・・。


「リボーンさん・・・」


ふと震える声がして振り向けば、そこには獄寺がいた。
全く、どいつもこいつも情けねぇ顔してんのは、てめぇのせいなんだぞ、ツナ。

「何だ」
「・・・あの、大丈夫ですよね・・・」

また、これか。

「――どいつもこいつも、俺に聞くんじゃねぇよ」
俺は予知なんてできねぇぞ・・・。と溜息を吐けば、獄寺はすみませんと短く謝った。



「信じてやれ」
「え?」


まだ手術中のランプは消えないで、その文字以外が赤く煌々と光っていた。
「お前の師匠と、ハルのツナへの好きの大きさを、だ」


一つ一つ区切るように言ってやると、獄寺は今度は少し希望を見つけたような顔になって頷いた。
全く、どいつもこいつも本当に世話が焼けるやつだな。


あの出血量だ。
弾はハルの体に残ることなく流れるように出て行ったとは言え、余談を許さない状況だろう。

絶対に、死ぬんじゃねぇぞ。
祈るような気持ちになっていたことに気付いて、まだその赤々と光るランプを睨みながら祈るように座るツナがいて、俺もまだまだだと思う。

結局、どれだけ人を殺そうとも、失うのは怖い。



「お前はツナが好きなんだろうが」

そのために何が何でもついていこうって俺や骸や雲雀ですら脅すように立ち向かったんだろうが。
何にもできねぇくせに、それでも足を震わせて何度も何度も食い下がって、ここまで来たんだろうが。



俺の言葉を最後に、もう誰も口を開く奴は居なかった。


ただ煌々と光るランプをじっと睨んで、祈るように指を組んだり、腕を組んで壁にもたれていたり、拳を握り締めたまま仁王立ちしていたり、何をするでもなくじっとそれを見つめていたり。
そうして様々な行動を取っていたけれど、誰もが知っていた。

あの真っ赤に光る頭上より少し上にあるランプが消えたときに、全てが決まるのだと。


「――ハル」
祈るようにか細いツナの声が聞こえた。

誰がコレを見て裏社会を纏めるボンゴレの10代目だと思うんだ、ダメツナ。



「置いて逝かないで・・・」

ツナの悲痛な叫びと同時に、真っ赤なランプが一瞬にして消えた。





彼女、という存在



( 何も出来なかった、何の力も持っていなかった、だけど、だからこそその存在は優しかった )