赤いランプが消えて、俺は急いで立ち上がった。

扉に近寄ると、シャマルが出てきた。


「シャ、マル・・・ハ、ルは?」
シャマルが笑って、俺はその場に崩れ落ちた。


良かった・・・。


後ろから医療班がストレッチャーを運んできて、ハルがいた。
「ハル・・・っ!」
近寄ると静かに胸が上下してて、頬はいつもの・・・とは言い難いけどピンク色になっていた。

生きてる。
「良かった・・・良かった、ハル」

放り出された手を握った(ほんのりと暖かい)。
目の前がにじんできて、もう一回ハルの手を握り締めた。


「ハル、ハル――ハル」
失わなくって良かった。

本当にどうしたらいいかわからないんだ、ハルが居なくなったら。
それだけ支えられてたんだと今更気付いた。
失いそうにならないと気付かないなんてどうしようもないけど。


――だから、もう失ったりなんてしないためにも。




「ツナ、あまり無理すんじゃねぇぞ」
真っ白な病室に移って、リボーンがそう言った。
やっぱり、ずっと一緒にいただけ分かってるんだろうな・・・俺が思っていること。
「わかってる。ありがとう、リボーン」


誰も居なくなった部屋でハルの手を握った。
「ハル、ハル。ごめんな、ハル」
目を閉じてるハルに頭を下げた。
起きてたら、言えないから。

「ハル、ごめんな」

そっと触れると、髪がさらりと落ちた。


もうこんな危険な目になんてあわせない。
ボンゴレ医療班が優秀だから体に傷は残らないとは言われたけど、だからってなくなるわけじゃない。

失いたくないんだ。
小さなハルの手を握った。いつだって呼べば笑顔を返してくれるハルは目を閉じたままで、ぞっとした。


もう一度同じことがあったら、ハルはきっとまた同じことをする。次は助からないかもしれなくても。
今回は助かった、助かったけど・・・。次も大丈夫だなんて保証何処にも無い。

ハルの掌に縋るように、両手で握り締めて額にあてた。


「ハル・・・ハル、ハル、ハル・・・」

名前を呼ぶたびに目を閉じていく血まみれのハルが浮かぶけど、名前を呼ばずにはいられなかった。


もうあんな目にあわせたりなんてしない、絶対に護る。
・・・ごめんな、ハル。


「ハルを失いたくなんてないんだ」

例えばその笑顔が曇ってしまうとしても。





天秤の反対側につりあうものなんて



( 失いたくない、失いたくなんて無いんだ。お願いだから、俺の目の前から消えてしまわないで )