「はひぃ・・・いいお話です」 ぐすっと鼻をすすったハルに、綱吉は苦笑した。 若干クリーム色を含んだ白い部屋の中でハルは大画面のテレビを見ながらボロボロと涙を流していた。 その大画面のテレビに映るのは今日本で人気絶頂だという映画のDVD。 ロマンチックや純愛方面に弱いハルはその物語に感動して涙を流していた。 ちなみに、綱吉は原作を読んでも泣けなかった。 「素敵ですよねぇ・・・」 うっとりというハルに綱吉はまた苦笑した。 こうやって感受性の高いところはハルの長所だと思う。 彼女のそのコロコロと変わる表情の豊かさに、元気付けられた。 真っ赤になったハルの目と鼻に苦笑して濡らしたタオルを持ってくる綱吉に、ハルは首を傾げた。 「そういえば、ツナさんお仕事大丈夫なんですか?」 毎日来てくれますけど・・・というハルに、綱吉はにっこりと笑った。 「大丈夫だよ。ハルはそんなこと気にしなくてもいいんだよ?」 「・・・」 優しい、のに。 ハルはバレないように濡れたタオルで隠しながら唇を噛んだ。 優しいのに、その言葉はハルを拒絶しているように感じた。 でも・・・。 (そうじゃないって・・・信じていたい自分がいる) 拒絶なんてする人じゃないって、そう思うのに。 「――そういえば、ハル。今日のお菓子は何?」 話題を逸らすように言った綱吉に、ハルは「あ、はい」と立ち上がった。 「今日はですね、今まで焼き菓子ばっかりだったので、ゼリーにしました!」 「ゼリー?」 きょとんとしている綱吉にハルは得意満面で言う。 「はい。みかんに林檎にさくらんぼ、パイナップルに桃もあるんですよ!」 あとで皆さんにもあげてくださいね!というハルに綱吉はうんと頷いて、ハルに続いてキッチンに入った。 優しい時間が過ぎていく。 毎日(時々飛ぶときはあるけれど)、綱吉はハルの部屋を訪れてハルが作ったお菓子を食べて。 この場所だけが柔らかな時を刻んで。 一週間前、綱吉は任務に赴いたときに軽傷を負った。 4日前、数人の末端の部下たちが殺された。 ボンゴレ内部の若干名による裏切りも発生し、一時は騒然となった。 けれど、この場所だけは切り離されたように。 「おいしいですか?ツナさん」 柔らかく微笑むハルに、綱吉は笑顔で頷いた。 「うん、おいしい」 ここには血なまぐさい話など一つも入ってこない、立ち入らない。 綺麗な、綺麗な場所で。 外が闇だというのなら、きっとこの場所は光だと名付けるのが相応しい場所だった。 だから、ここだけは、このままでいてほしいと願っていた。 |