もう血なんて指先からはなくなっていた。 『ここ』に来る前にはこれくらいの怪我なんて普通にあったし、特に書類なんて扱ってたから冬は酷くて・・・。 それくらいと、同じ傷、なのに。 「ツナさん・・・」 手、冷たかった・・・。 勢いよくつかまれて、ツナさんと、『ここ』にきて初めて・・・。 初めて、目があった。 そのとき・・・本当に、泣きそうになったんです。 下唇を噛まないと、今にも小さな子どもみたいに泣いてしまいそうだったんです。 今だって、思い出したら泣きそうです。 とてもとても優しい人だから、『ここ』にいることは誰かの意向なんかじゃなくって、ツナさんが決めたことなんだって、分かってました。 だから、ツナさんがハルが『ここ』にいることを望んでるんだって。 でも、でも・・・ツナさん。 目があった瞬間に、ハル、分からなくなったんです。本当にツナさんはハルが『ここ』にいることを、望んでいるんですか? いてほしいって、思ってるんですか? 「ツナさん・・・」 『ここ』には、たくさんのものがあるけど、何にも無かったから、一人の時はツナさんの名前を呼ぶのが癖になっちゃいました。 だって、『ここ』には繰り返しはあっても、毎日が無いんです。日付すら、『ここ』にはないんです。 ツナさん、本当にハルが『ここ』にいてほしいってそう思ってるなら、ハルは『ここ』にいます。 ツナさんが時々ふとした拍子に疲れた顔をすることだって、隈があることだって、部屋に入った瞬間重い溜息をつくことだって。 全部、知らないふりをしてます。 ――でも、駄目だ!って何かが言うんです。 ツナさんと目があった瞬間に、何かが駄目だって言ったんですよ。 このままじゃ、いけない。 目を見た瞬間に、思い出したんです。ハルは、どうしてこの世界についてきたのか。 ハルは、ツナさんの傍にいたくて来たんです。 そりゃ、雲雀さんは恐かったですし、骸さんも恐かったですし、散々馬鹿にされましたし、足手まといだって言われましたし。 本当にもう、くじけたときだってありましたし。 だけど、ツナさんが、いつだって苦しみながら拳を振るうツナさんがあんな顔をしてたとき、駄目だ!って思ったんです。 ツナさんを一人にしちゃ駄目だって、思ったんです。 だから、足や手は震えましたし段々自分で何言ってるかわからなくなってきましたし、奇麗事ばっかり、なんだろうけど言い並べて。 雲雀さんや骸さんに護身程度の戦いを教えてもらって、獄寺さんと衝突だってして。 それでも、ハルはツナさんの傍にいたかったんです。 傍にいなくちゃいけないとか、そんなことじゃなくって・・・ただ、ハルが傍にいたかったんです。 『ここ』にきて、ツナさんは本当にいつも来てくれましたよね。 前じゃ中々暇を取れないときだってあったのに、それが嘘みたいに緩やかで穏やかな時間で。 ツナさんが傍にいるって、思ってたんです。本当ハルって駄目ですね。 ハルは身勝手なんです。・・・『ここ』にいるのが嫌になっちゃいました。 だってここ、ツナさん居ないんですよ? 毎日毎日きてくれるけど、優しいツナさんしか、ここに居ないじゃないですか。 ハル目を見るのが好きなんです。だって、目をみたら本当はどんな人なのかって、結構分かるんですよ? だからハル、あんな空っぽの目なんて、見ていたくないんです。 こんなに我侭だったなんて、自分でも思ってみませんでした。でも、ハルはベットの上に転がってるお人形さんじゃないんです。 ごめんなさい、こんなに自分勝手で。でもね、ツナさん、 |