ツナさんは、失いたくないって思ってくれてるんですよね?
ハルは、ツナさんにどんなことされたって、大好きです。疑ったりなんて、しません。

だから、ね、ツナさん。ハルはツナさんのその思いのために――。




「はひー、今日もいいお天気です」

『ここ』に来てから独り言が増えたような気がします・・・とこっそり溜息をついた。
だって何だか、独り言ってオバさんくさいですよね。
いえ、もとよりハルは独り言は多いんですけど。


ささっと着替えて、今日もまたキッチンに入り込んだ。
何かお菓子を作るのはもう定番になってしまって。
別にお菓子つくりじゃなくても良かったんですけど・・・多分、何か没頭できることがしたかっただけなんです。


チョコレートを混ぜた生地をフンワリと混ぜていった。
うん、中々いい感じです!
そう考えてると突然電話が鳴ってきて、出たらツナさんの声が聞こえた。


『もしもし?ハル』

「は、はい。どうしたんですか?」
ちょっとどもってしまったんですけど・・・変だって思われてませんよね。

『あの、今日はいけないんだ。その仕事があって』
無理矢理リボーンに押さえつけられてるんだよ・・・と苦笑するツナさんに、思わず笑ってしまった。

「お仕事頑張ってくださいね!さぼっちゃダメですよ!」
『うん。ごめんね、折角お菓子作ってくれてるのに』
多分ツナさんは向こうで目の下に隈をつけて困ったような顔で苦笑してるんだろう。
ツナさん、一体徹夜何日目なんでしょうか・・・。


「――いいえ、気にしないで下さい。それよりも、無理しないでくださいね」

声は震えてなかっただろうか。態度はおかしくなかっただろうか。
不自然じゃ、なかっただろうか・・・。



『うん。ありがとう、ハル』
それじゃあ、と言って切れた電話に、こっそりと息をついた。


疑問が、確信に変わった。



「はひー・・・ツナさんがこれないなら、どうしましょう」

指を切ったあの日から、ちょっと続けてきたことがあるんです。
ドラマを見て、お菓子を作って、ドラマを見て、お菓子を作って、ドラマを見て、その繰り返し。

数日間、繰り返してたんです。


「むむむ、じゃあ誰か呼びましょうか・・・」
頭の中に皆を思い浮かべてみる。

「獄寺さんは・・・絶対ツナさんのサポートがしたいって不満たらたらな顔するんですよねー。あの人態度顔に出る人ですし」
山本さんや了平さんはゆっくり味わって食べてくれなさそうですし。

考え込みながら、簡単な飴細工で花を作った。
アニソドンテア――お花って、作るの一苦労です・・・。

リボーンちゃんは有名なヒットマンでしょうし、ツナさんを抑えつけてるから来られないでしょうし。

雲雀さん、は、こんな細かい飾りとか無視しちゃいそうですよねー。
まったく、情緒ってものがないんですから。


そう思いながら、備え付けられた電話を取った。



「――もしもし?骸さんですか?あの、よかったらお茶しませんか?凪ちゃんも一緒に」


ツナさん、昨日はお菓子を作ったんですよ。





絶対貴方なら気付いてくれる



( 私はそう信じて、動き出すの )