「っ!」

足が絡まって、こけそうになる。

走るのは久し振りだから勿論体力なんて落ちてて、短い距離を走っただけなのに息が切れてて。
急いでバランスを戻してもう一度走り出した。

止まってる時間なんて、無いんです。



「ツナさん」

名前を呼んだけど、それが返って来る場所にはまだ時間がある。

廊下の床ってこんな色でしたっけ、ここから見える景色はこんな世界でしたっけ。
ああもう、久し振りすぎて、涙がでる。

「(でもまだ・・・が・ま・ん、です)」
あの今じゃ青年と呼んでも差し支えないほどに成長したあのボヴィーノの少年の口癖を呟いてみた。一つ一つ確かめるように。
ちょっとだけ、勇気・・・でました。
こっそりと笑ってまた走り出して、長く感じる時間に苛々した。

何でもっと早く走れないんでしょう。
獄寺さんは一歩先を走っていて、遅れていかないのが精一杯だった。
多分、獄寺さんはもっと早く走れるのにゆっくりと走ってくれてるのに。



ツナさん、ハルはサイテーな女です。
あの部屋にいてほしいっていうツナさんの気持ちなんて完全無視してしまいました。

それだけじゃないんです。
前にツナさんに婚約の話があがりかけた時があったでしょう?

カサブランカファミリーのボスの娘さんで、白い肌に金色の髪に青い目に、まるで人形のように綺麗な女の子。
そんな時突然呼び出されて婚約者のフリをしてくれって頼まれてカサブランカのファミリーと会った時、ちょっとだけ勝ったって思ったんです。

どれだけ可愛くたって綺麗だって、ツナさんはハルのことを婚約者って紹介してその婚約を蹴ったんです。
ツナさんはそんな綺麗で可愛い女の子に目を奪われること無く、フリだけど婚約者だって迷うことなく紹介してたんです。
今から考えたら、本当にくだらない嫉妬で。


パーティで恋人役とか頼まれたとき、嬉しくって・・・でも悲しくって。
終わった後「おつかれさま」って言われたとき、ものすごく悲しくって。

本当の恋人にはなれないんですねって思って、いつかツナさんの隣に立つだろう恋人を考えると、ものすごくいやな気分になったんです。

別にハルはツナさんの恋人ってわけじゃないのに。
そんな嫉妬ばっかりなんですよ。


傍にいなくちゃとか、空っぽの目をもつツナさんをそのままにしておけないとか。
そんな色々な想いもあるけど。


一緒にいない時にもし女の人がツナさんに近づいたらと思うと、酷い気持ちになるんです。
嫉妬もするし、たったの一言で浮き沈みもするし、自己嫌悪に苛まれたりしたり。

やっぱり色々口で言ってたって、自己が中心にある人間です。


だから本当に、ハルは最低です。


怒られたっていいです、嫌われちゃったら・・・多分立ち上がれないくらいに悲しいけど。
でも、あんな抜け殻みたいなツナさんなんていやです。

目を見てからじゃないと気付けなかったのにこんな大口たたいて、って言われそうですけど。
怒られたっていいです、昔みたいに呆れられたっていいです。

最低だって言われても・・・我慢します。


本当の、ツナさんにあえるなら。





わたしを動かす感情は



( 嫉妬と願いと祈りと苦しみと切なさと喜びと哀しみと、恋 )