音を立てて扉が閉じられて、綱吉ははとしたように顔を上げた。

「恭弥さん!了平さん!」
本来の目的を忘れていたというように綱吉は叫んで、その言葉に恭弥が一つ溜息を吐いた。

音は段々近くなる。


「まだ、諦めてないの?」
折角自分の思いも自覚したんでしょう?という恭弥にうろたえかけて、それから違うと頭を振った。

「だからこそ、ハルにはあの部屋に戻ってほしいんだ!」

あの危険のない部屋に。
確かに誰にでも必ず死は訪れるけど、その間に命が奪い取られないように。
あの、綺麗な綺麗な、争いのない場所で。


「でも、あの子はそう思って無かったみたいだね」
冷たい声が響いた。

「っ!」


段々と大きくなる足音に綱吉は身を震わせた。
彼女が、彼女の意志を持って、あの場所を壊した。
あの綱吉を優先してきた彼女が、綱吉の言葉に頷かずに、あの部屋を壊した。

それだけで、


「そんなこと言ってっ、ハルが死んだらどうするんですかっ!」

思わず、口をついて出た。

言うつもりなんて無かったけれど、その思いが一番強くて。
そうして死んでしまったら、どうするんだという思いが頭の中を駆け巡っていて。


けれど、一対の瞳が、綱吉を見る。



「そうならんように、極限護ればいい!」

えっへんと胸を張る了平に綱吉は言葉を失った。
この天然め!と内心悪態をついて、それから気を取り直すように上体を起こした。

「いや、ですけどね、了平さん。護りきれないときだってあるじゃないですか」

「そんなものはない!」
いや、だから・・・あったからあの状態になったんだって・・・と依然主張を頑として訴えつづける了平に綱吉は溜息を吐いた。
が、そんな綱吉の様子を了平は一切気付くことは無かった。

そうして、そのストレートで頑ななまでの主張はまだ続いた。

「だが助かっただろう?」
怪我も治ったじゃないか、と訴える了平に、綱吉は額を抑えて叫ぶ。

「そりゃ、今回は助かったかもしれませんけど、でも次はどうなるか!」

もし、次は助からなかったら。
そんな不安を考える前に了平の声が響いた。

「なら、そうならんようにすればいい」

足音は更に近づいていた。


「今回のことが無かったとしても、また同じようなことは極限あるんだぞ」

「だから、ああしたんじゃないですか!」
もう一回同じことが繰り返されないために。
そう訴える綱吉に、了平は首を傾げた。

「全く、極限人の話を聞かんやつだな」
どっちがだよ・・・と内心綱吉は溜息をついた。





それでも諦められない



( 平和な場所で生きていてほしい、死なないでほしい、いつか )